『おちょやん』など大抜擢が続いた倉悠貴 デビューからまだ2年、現在の魅力を知る3作品

大抜擢が続いた倉悠貴の魅力を知る3作品

 2021年に印象に残った俳優として、倉悠貴の名を挙げる方は少なくないだろう。出演した映画が6作も公開され、そのうち2本では主演を務めたのだ。それに何と言っても、朝ドラ『おちょやん』(NHK総合)に出演したことの影響力は大きいはず。杉咲花演じる“ヒロインの生き別れの弟”という大役に抜擢され、一躍その存在が広く知られることになったのだ。2022年、さらなる飛躍が期待される彼の魅力をいまのうちに知ることができる3作品を、ここで紹介したい。

『樹海村』(2021年)

『樹海村』(c)2021『樹海村』製作委員会

 俳優の池田エライザが初監督を務めることが大きな話題を集め、しかもそこに倉が主演として配された『夏、至るころ』(2020年)。同作で大抜擢され、瑞々しい演技を披露した彼が次にどのような作品に出演するのか気になっていた方は多いことだろう。それが、この『樹海村』である。2020年に公開され話題を呼んだ『犬鳴村』に続く「実録!恐怖の村シリーズ」の第2弾となった本作が描くのは、“ある箱の呪い”をめぐる悍ましい物語。山田杏奈と山口まゆがダブル主演を務め、倉のほか、神尾楓珠、工藤遥といった同世代で勢いのある俳優たちが肩を並べている。

 倉が演じているのは山口まゆ演じる主人公の恋人であり、寺の住職の息子・鷲尾真二郎。この青年が、呪いの存在にいち早く近づくのだ。“主人公の恋人”であり、“恐怖の根源に早く近づく人物”ーーホラー作品におけるこのポジションが、いかに重要なものかは想像に難くないだろう。ネタバレ回避のために触れられないが、彼がどんな奮闘ぶりを見せるのか、ぜひ見守っていただいきもの。そして本作は倉にとって、同世代にしてキャリア的に先輩である俳優たちとの共同クリエーションであり、挑戦作となっている点も注目してほしい。

『街の上で』(2021年)

『街の上で』(c)『街の上で』フィルムパートナーズ

 正直、本作での倉の出番は多くなはない。というより、「ほとんどない」という言い方になってしまう。ひょっとすると、本編鑑賞中は倉の登場に気がつかず、エンドロールに「倉悠貴」と彼の名が刻まれているのを目にして驚いたという方も少なくないのではないかと思う。本作における彼のポジションは、そういったところなのだ。とはいえ、一瞬しか映らないなどということでもない。たしかに倉は画面の中に存在しているーーそう、言うなればその存在の仕方が非常に自然なのである。これは一人の青年(若葉竜也)と4人のヒロイン、そして下北沢の街の姿を見つめたもの。“街そのものが主人公”という側面もあるため、登場人物はとても多い。その中に倉は、実に自然なかたちで収まっているのだ。これは監督の演出や、共演者たちとの空気感を共有できたからこそ実現できたものなのだと思う。

 彼が何の役を演じているのかはあえて記さないでおくので、「街」の一部となっている倉の姿をぜひ見つけてほしい。そして、本作が封切られたのは、ちょうど『おちょやん』で彼が演じたヨシヲが世の話題をさらっていた頃である。同作での倉を見ていた方は、そんなことを思い出しながらだと、また違った楽しみ方ができるのではないかと思う。

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