リアルサウンド映画部編集部6人が選ぶ、2024年公開・配信映画10本

リアルサウンド映画部編集部の2024年映画

 リアルサウンド映画部恒例の企画・年間ベスト(映画・国内ドラマ・海外ドラマ・アニメ)が出揃った。全18人の選者の個性が光る中、編集部でも今年のベスト映画を選出。昨年とは趣を少し変え、編集会議の様子の一部を切り出すような形で、編集部による2024年の10本を紹介する。

リアルサウンド映画部編集部が選んだ2024年の10本

・『パスト ライブス/再会』
・『瞳をとじて』
・『ザ・バイクライダーズ』
・『異人たち』
・『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』
・『劇場版モノノ怪 唐傘』
・『夜明けのすべて』
・『ルックバック』
・『チャレンジャーズ』
・『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』
※『陪審員2番』

石井達也(以下、石井):ビクトル・エリセ監督31年ぶりの新作『瞳をとじて』には圧倒されました。いろんな作品があったけれども、一番「やられた!」と思ったのは年始に観たこれだったなと。ビクトル・エリセは「映画を勉強しよう」と決めたときに背伸びして観たけど、その当時は全然分からない部分が正直あって。でも、分からないながらもリバイバル上映などのたびに観ていたら『ミツバチのささやき』も『エル・スール』もその凄さがどんどん分かっていくようになった。『瞳をとじて』はそれらの作品と比べれば、かなりわかりやすいと思うし、映画が好きな方はグッとくる瞬間がたくさんある一作だと思います。

宮川翔(以下、宮川):僕は『パスト ライブス/再会』が好きでしたね。基本的にラブストーリーはジャンルとして大好きなんですけど、『パスト ライブス/再会』は王道のラブストーリーでありながら映画的カタルシスに溢れた作品として秀逸でした。2024年は『恋するプリテンダー』『シビル・ウォー アメリカ最後の日』『トラップ』、『ツイスターズ』『チャレンジャーズ』など、エンタメ性の高い洋画作品が豊作だった印象があります。2024年のラストにU-NEXTで配信のみの展開となったクリント・イーストウッドの『陪審員2番』も観た勢いで1位にしたいくらいの大傑作でした。とにかく最初から最後までずっと面白かった。

石井:まさに。年末の最後の最後に観た一作としてこれは外せないと自分も思いました。10本選んだ後でしたが、無理やり入れましょう。

花沢香里奈(以下、花沢):『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』『ロボット・ドリームズ』『異人たち』など、人の弱さをテーマにした作品が響いた1年でした。傷ついた人たちが、ひっそりと寄り添うひとときを描いた物語が多かったように思います。

石井:確かに、最近は国内ドラマでもそういった傾向が見られるね。洋画では小野瀬さんが『ザ・バイクライダーズ』を強く推していましたよね?

小野瀬太一朗:はい。今年大型二輪免許を取ったんです。このハーレーダビッドソンを死ぬ前に乗りたい思いがあって。作品の中に出てくるバイクは日本で300万、400万以上するものばかりなんですが、最高の環境で音やビジュアルを楽しむ映画体験がシンプルに素晴らしかったです。

花沢:『ザ・バイクライダーズ』いいですよね。トム・ハーディーは、やっぱり『マッドマックス 怒りのデス・ロード』や『カポネ』のような重厚な演技が似合う人だなと思いました。趣味で始めたバイカー集団が、徐々に手のつけようのないギャングに発展してしまう展開は、『HiGH&LOW』シリーズを彷彿させて、ハイローファンとしても見どころのある作品でした。

佐藤アーシャマリア(以下、佐藤):私は『劇場版モノノ怪 唐傘』のビジュアルに圧倒されました。恥ずかしながら、TVシリーズを知らない状態で観たんですけど、AKB48の「ヘビーローテーション」のMVを初めて観た時のような衝撃でした。視覚的な情報量が濃密すぎて、新たな表現に触れる感覚をずっと味わっているような。

徳田要太(以下、徳田):映像技法的に見ても面白い作品でした。浮世絵のような、遠近法とは異なる奥行きの表現を全編で貫いていて。

宮川:『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』は徳田くんの殿堂入りなんだよね?

徳田:はい。通常版のほか舞台挨拶や入場特典のために10回近く通ったので。というのは冗談として、ライブシーンも含めて新規カットの分量が膨大(前後編それぞれアニメ1話分に相当するくらい)なことに驚きました。「総集編」の劇場での体験性を考えるうえでユニークな試みだったと思います。

石井:アニメ映画も大手配給会社の大作から作家性の強い作品まで、本当に充実していたと思います。公開時に編集会議でも話題になった『ルックバック』はみんなどうですか?

佐藤:口コミで話題になっていた後に映画館で観た時は、期待しすぎていたからか、大きな衝撃はなかったんです。。でも、最近配信で2回目の鑑賞をして、物語の濃密さを確認しましたね……。2回目じゃないと気付けない感動があるんだと。。

宮川:映画として評価できるものにはなっていたと思います。ただ、原作の衝撃が強すぎて、個人的には原作を超えられるほどの強い印象は受けなかったかな。

石井:アニメ映画の原作ものつながりでは、『デッドデッドデーモンズデデデデストラクション』もベストに入れている人がいたけど、みんな前編。後編より前編の方が良かった理由は?

佐藤:前編は特におんたん(凰蘭)を演じたあのちゃんの演技が光ってましたよね後編までに時間が空いてしまって、原作未読勢としては前編の衝撃が薄れてしまったような感覚が少しあったように思います。

花沢:日常とSFが同居する世界観や、回想シーンと現在起きていることの辻褄が合わないという仕掛け自体は面白かったんですけど、前編の終わり方から期待した以上のことが後編で起こらない感じはありましたね。

徳田:構成として、後編のラストが「世界は大変なことになっているけど、私たちは特別な関係だよね」という、わりとシンプルな決着の付け方だったことも大きいんじゃないでしょうか。

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 ストライキの影響もあり、洋画大作で目立つ作品が少なかった1年ではあるが、若手から大ベテランまで多種多様な作品が並んだ2024年。また新たなエンタメに出会える2025年を楽しみに待ちましょう。

『パスト ライブス/再会』
Copyright 2022 ©Twenty Years Rights LLC. All Rights Reserved
『瞳をとじて』
©2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A.
『異人たち』
©2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
『劇場版モノノ怪 唐傘』
©ツインエンジン
劇場版『BanG Dream! It's MyGO!!!!! 後編 : うたう、僕らになれるうた & FILM LIVE』
©BanG Dream! Project
『ザ・バイクライダーズ』
©2024 Focus Features, LLC. All Rights Reserved.

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