韓国“アジュンマ”映画がアツい! キム・ヘス、ラ・ミランらの“放っておけない”強さ
現在公開中の『市民捜査官ドッキ』の主演を務めるラ・ミラン。最近は主演も多いが、長らくバイプレイヤーであった。『市民捜査官』の中では、振込詐欺にあったシングルマザー役で出演。詐欺組織のメンバーと手を組んで、詐欺集団に立ち向かう。韓国では“おじさん=アジョシ”俳優の活躍が目立つ時期があったが、昨今は“おばさん=アジュンマ”俳優の活躍も増えてきている。そんなアジュンマが印象的な映画作品を振り返ってみたい。
『密輸 1970』キム・ヘス
2024年に日本で公開された『密輸 1970』にW主演したのが、キム・ヘスとヨム・ジョンアだ。特にキム・ヘスは長年、青龍映画祭の司会を務めるなど(2023年に勇退)、韓国映画界の中心人物と言ってもいい。
演じる役も、セクシーにして豪快な役が多く、『密輸 1970』でも、漁村で海女をしていたものの、密輸品の引き上げを行っていたところ税関の摘発に遭い、ひとりだけ逃亡してしまうチュンジャという役を演じている。
戻ってきたチュンジャは、いわば裏切者。最初は逮捕されてしまった旧友のジンスク(ヨム・ジョンア)とは険悪だったが、そこからまた友情が復活する様子もアツい。
また、チョ・インソン演じる裏社会の密輸王クォンとの関係性も敵か味方か、なかなかわからず危うさをはらんでいる。
キム・ヘスは、同年代の俳優の中では、ゴージャスでミステリアスな役を演じることも多く、一回りほど離れた俳優との恋におちる作品が多いのも特徴的だ。そして、窮地に陥っても転んでもただでは起きないしぶとさもキム・ヘスの最大の魅力と言ってもいいだろう。
『ひかり探して』キム・ヘス&イ・ジョンウン
映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)の家政婦役で一躍、広く知られる存在となり、2022年には映画『オマージュ』で初主演を果たしたイ・ジョンウン。彼女は、先述のキム・ヘスと映画『ひかり探して』で共演している。
ソウルで働く刑事のヒョンス(キム・ヘス)は、亡くなった少女の事件を調査しに離島に向かう。そこで少女と暮らしていたのが、イ・ジョンウン演じる女性だった。彼女は、寝た切りの姪と暮らしており、かつて姪が死にかけたときに、農薬を飲んだことが原因で喋れなくなっていた。彼女には役名がなく、映画の中では「順天から来たおばさん」と呼ばれている。
やがて事件を調査するうちに、少女とおばさんの関係性が見えてくる。筆者は個人的には、韓国の女性映画の魅力を「困っている人を放っておけない」というシーンにあると思っている。本作でも、おばさんは少女を放っておけず、またヒョンスは傷ついた少女に自分を重ねて調査を重ねる。そして調査をするうちに、ヒョンスはおばさんにも何かを感じるようになっていく。この三人の「傷」で繋がる関係性に心を持っていかれてしまった。