『日本沈没-希望のひと-』が託した希望の形 ポストパンデミック時代の危機描く
『日本沈没-希望のひと-』(TBS系)最終話は、事前予想が飛び交う中、想像をはるかに超えるアクシデントに見舞われながらも、未来への希望と願いを込めたラストシーンとなった。
前話で中国政府の了解を得たことで、各国との移民交渉も再開。そうした矢先、東山総理(仲村トオル)と世良元教授(國村隼)の滞在先のホテルが爆破される。犯人はCOMS推進に反対する活動家で、円暴落への憤りからドローンによるテロを強行。東山は一命を取り留めたが、世良は帰らぬ人となった。臨時代行を務めた里城(石橋蓮司)は、生島自動車会長の生島(風間杜夫)を移民担当特命大臣に任命して難局を乗り切ろうとする。
海外移住については移民先を抽選で決定することになり、移住が開始された折も折、世界中を揺るがす新たな感染症が報告される。嘔吐や発熱を伴い、感染者を死に至らしめるルビー感染症の変異株が日本人の移住した地域で発生。明らかに新型コロナウイルスを意識したと思われるルビー菌は、生物を宿主として経口感染するが飛沫感染はしない。各国は感染症を持ち込んだのが日本人であると考えて、移民受け入れ停止を表明。一刻の猶予も許されない中、天海(小栗旬)は閉じてしまった扉をこじ開けるために知恵を絞る。
政治への風刺やジャーナリズムへの問題提起など、時事的な話題が随所に登場する本作だが、最終話でも現在進行形のトピックを積極的に取り込んだ。コロナウイルスに関して幸いにも日本では小康状態にあるとはいえ、世界中で新たな変異種が流行の兆しを見せており、緊急事態宣言下で社会を覆った閉塞感は今なお生々しく記憶にある。地殻変動という脅威を克服する取り組みを阻んだのが、同じく地球が生み出した感染症だったこと。それがドラマの中だけと言いきれないことを、震災と感染拡大を経験した私たちは知っている。現実と並走した『日本沈没-希望のひと-』は、結果的にポストパンデミック時代の危機を描く作品になった。
海底のスロースリップは田所博士(香川照之)の予想を超えるスピードで進行していた。安全に移住できるメリットは4カ月で、残された人口は9千万人。1日で輸送できるのは100万人なので、1カ月以内に受け入れを再開させなくてはならない。天海たちは常盤(松山ケンイチ)の父で常盤ホールディングス会長の統一郎(小野武彦)に治療薬の開発を急がせる。椎名(杏)の情報によると、変異株は日本人移民がいない場所でも同時多発的に報告されており、環境問題の権威ブラント博士の研究では、ルビー菌は温暖化によってグリーンランドの永久凍土から溶けだしたものである可能性が高い。そして、変異種に効かないと思われていた常盤製薬の治療薬に他社の治療薬を合わせて投与することで、重症化を防止できることが判明。この成果を引っ提げて、東山は世界環境会議で渾身のアピールを行う。