小栗旬主演『日本沈没』は原作へのアンサー? 人間的なぬくもり感じさせる仕上がりに

小栗旬主演『日本沈没』は原作へのアンサー?

 希望はつくり出すものなのかもしれない。『日本沈没-希望のひと-』(TBS系)第8話。前回、対立するアメリカと中国を向こうに回し、両面作戦で有利な条件を引き出そうとした天海(小栗旬)のもくろみは東山総理(仲村トオル)の失策で水泡に帰した。中国政府は日本を名指しで非難し、世界中に日本沈没が知られてしまう。移転交渉は暗礁に乗り上げ、国際的な信用を失った日本円と日本企業の株価は暴落した。

 第8話のキーワードは「希望」だった。中国が代案として提示したのは常盤医療を含む5社の移転。しかし、常盤グループ会長で常盤(松山ケンイチ)の父、統一郎(小野武彦)は首を縦に振らない。「日本人を海外に逃がせばそれでいいと思ってるのかもしれないが、その先には一人ひとりの人生が続いていくんだぞ」と統一郎。マスコミの集中砲火に加えて、頼みの綱の企業にまでそっぽを向かれ、もはや打つ手なしとも思われた。

 まさにどん詰まり。だが、それ以上に危機的だったのが人心の荒廃。なかには冷静さを失う者も見られた。自棄を起こした客が居酒屋で暴れ、街宣車は東山と世良教授(國村隼)を糾弾。「今まで頑張ってきたことが全部台無しになって、今この瞬間もどうなるかわからない中で、夢や目標も全部奪われて人間関係もバラバラになりますよね」。ため息交じりの椎名(杏)の言葉は状況を的確に言い表していた。それに天海がポツリと返した「やっぱり希望が必要だな」が、本作の真のテーマを浮かび上がらせた。

 原作の小松左京『日本沈没』は、SF的な装いの根底に国土を失い流浪の民になった日本人を描くというテーマがあった。これに対して本作は現実世界に通じる政治の内幕やリーダー論を扱う一方で、「希望のひと」という副題が示しているように、危機的状況にあって出口を見つけようとする態度が一貫している。そして、それこそが2021年に『日本沈没』を届ける意味にほかならない。天海を主人公に据えた意味もそこから鮮明になる。政治家の顔ぶれが変わっても、公務員は粛々と仕事を遂行しなくてはならない。政治がさじを投げだした課題にも粘り強く課題解決に取り組む彼らは諦めてはいけない人でもある。

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