『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は見どころ満載 最後の楽しい学園生活と闇の復活

『炎のゴブレット』はシリーズの転換作

 近年アートハウス寄りの作品に出演し、『THE BATMAN-ザ・バットマン-』で次期バットマン役を演じることでも知られているロバート・パティンソン。スクリーンデビューして間もない、『トワイライト』にもまだ出演していない19歳のパティンソンが演じたセドリックは、シリーズ屈指の好青年だ。同じホグワーツ選手として、最初こそ彼の参加を訝しがるも、孤立していたハリーを元気づけたり、試練のヒントを教えてあげたりとびっくりするくらい良いやつ。中身も外見もイケメン。彼ほど「スポーツマンシップ」という言葉が似合う男はいない。しかし、だからこそ魔法使いの良心ともいえる彼が、復活した闇の帝王ヴォルデモート卿に命を奪われたことが悲劇的なのだ。そんな彼を目の前で殺されたハリーの心に、傷がつかないわけがない。

 ヴォルデモートと呪文をぶつけあった際、両親とセドリックのゴーストに助けられた彼が泣きじゃくりながら彼の亡骸を持ち帰る。その時、映画の冒頭から親子仲良しでほのぼのとした印象があったセドリックの父が、「私の息子だ……!」と悲痛の叫びを上げるシーンは、本当に観ていて悲しい。

 なにより、実はセドリックの死は映画シリーズで初めて描かれた“生々しい死”なのである。第1作目の『ハリー・ポッターと賢者の石』でもヴォルデモートに取り憑かれていたクィレル先生が死んだが、彼は身体が灰になって跡形もなくなってしまったので、なんとなく死の感覚が鈍い。それに対して、まだ瞳孔の開いた目が開ききったまま横たわっている遺体のセドリック。皆が彼の死をその場で理解したことの重み。生徒の死もまた、映画シリーズで初めてのことだった。

 最高にかっこいい火を吹くドラゴン、水中の試練のハラハラ度、クリスマスパーティーでドレスアップしたハーマイオニーの綺麗な姿、ハグリッドのロマンスなどなど。学園祭のようなワクワクイベントも堪能できると同時に、死喰い人や不死鳥の騎士団メンバーのアラスター・ムーディの登場(なお、中身はほぼずっとクラウチ・ジュニアで、本人は最後の数分にしかいない)、アグレッシブになるダンブルドアなど、今後のシリーズにおいて重要な要素が散りばめられている本作。楽しさとダークさが混在する『ハリー・ポッター』シリーズの旨味が存分に味わえる快作なのである。

■放送情報
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
日本テレビ系にて、11月26日(金)21:00~23:24放送(※放送枠30分拡大)
原作:J・K・ローリング
監督:マイク・ニューウェル
脚本:スティーブ・クローブス
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソン、ヘレナ・ボナム=カーター、ロビー・コルトレーン、レイフ・ファインズ、アラン・リックマン、ボニー・ライト
TM& (c)2005 Warner Bros. Ent. , Harry Potter Publishing Rights (c)J.K.R.

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