『アバランチ』第1部完結で黒幕が明らかに 時間軸が交差するストーリーテリングの妙

『アバランチ』第1部完結で黒幕が明らかに

 これまでの各話にならえば、第5話の影の主人公は大山だった。得体の知れない大山という人物を知ることは、そのままアバランチの正体を明かすことに通じる。私たちが知らないうちに誘導された視線の先には大山がいた。決して自らを語ることのない大山は、本作の中心に深く根を下ろしており、全ての謎を握る存在。驚くべきことにアバランチの出自が語られた第5話終了後でも、大山が何を考えているかは実のところわかっておらず、大道寺(品川徹)や山守の推測によるのみ。おそらく第2部で徐々に明らかになるのだろう。

 藤田の命を奪った大山を倒す。種を明かせばそれだけだが、仕掛けと補助線を引きながら感情とイメージの立体的な像を立ち上げる語りの巧さが際立っていた。そして、第1部を終え攻守交代の呼び声とともに物語は急激に動き出す。過去へ向けられていた私たちの視線は現在に引き戻され、公正なる権力のおぞましいリンチがはじまるのだ。

 羽生と山守の過去はアバランチの誕生と密接に結びついており、羽生が経験した町工場のエピソードは本作に不可欠なパートを担っていた。個人的な動機に基づかない正義は信用できないが、個人的な動機で終わるならそれは正義ではない。「巨悪によって正義をねじ曲げられた人間」という誰しもの心にある発火点。大義と正義を分けるものは純粋な怒りであり、藤田の「正義ってのは直感的なもんだろ」という言葉はそのことを裏付ける。力なき正義は無力と言われる。そうであるとして、逆さのAを掲げる正義に勝利はあるのだろうか?

■放送情報
『アバランチ』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、福士蒼汰、千葉雄大、高橋メアリージュン、田中要次、利重剛、堀田茜、渡部篤郎(特別出演)、木村佳乃ほか
監督:藤井道人、三宅喜重(カンテレ)、山口健人
音楽:堤裕介
主題歌:UVERworld(ソニー・ミュージックレーベルズ)
プロデュース:安藤和久(カンテレ)、岡光寛子(カンテレ)、笠置高弘(トライストーン・ピクチャーズ)、濵弘大(トライストーン・ピクチャーズ)
制作:カンテレ、トライストーン・ピクチャーズ
(c)カンテレ
公式Twitter:@avalanche_ktv
公式Instagram:@avalanche_ktv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる