『アバランチ』は『新聞記者』の延長線上に? 綾野剛演じる羽生らが示す正義の存在

『アバランチ』羽生らが示す正義の存在

 「警察が頼りにならない。信用できない。それどころか証拠を隠蔽しようとする者までいる」。そんな時はどうすればいいのか? その答えは「誰かがやらなきゃいけない」。それをするのがアバランチだ。

 刑事ドラマとクライムサスペンスの定型を打ち破る異色作であり、月曜夜の新ドラマ枠の記念すべき第1作となった『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)は、主演を綾野剛、チーフ監督を映画『新聞記者』、『ヤクザと家族 The Family』の藤井道人が務める。第1話では、謎の集団「アバランチ」がそのベールを脱いだ。

 壁に残された逆さのAのマーク。なぜ雪崩を意味する言葉が彼らの呼び名になったのか? その謎はストーリーが進むにつれて明らかになる。捜査一課にいた西城英輔(福士蒼汰)は上司に暴行を加えたことで、特別犯罪対策企画室へ左遷される。室長の山守美智代(木村佳乃)に連れられてやってきた雑居ビルで、西城は羽生誠一(綾野剛)、牧原大志(千葉雄大)、明石リナ(高橋メアリージュン)、打本鉄治(田中要次)と出会う。それがアバランチだった。

 警察でもなく、反社会的勢力でもない。法治国家である日本で世間の目の届かない場所に生息し、その点でアウトローな存在といえる。ただ、その在り方は独特。法の抜け穴を探すというよりは、法が機能しない社会の闇に自分たちなりの方法で罰を与える。情報が氾濫する社会にあって素顔を隠すことで匿名性を維持し、表に出るのは「アバランチ」というコードネームのみ。彼らの真の目的は何なのか?

 冒頭からいくつもの謎が提示され、それらの回答は保留されたまま、流れるような展開の中、大規模都市開発プロジェクトのリーダー風間道明(安井順平)の失踪事件を追って、羽生たちが躍動する。アウトロー集団と聞くと破天荒なイメージを抱きがちだが、アバランチのメンバーから感じるのはもっと自由な何かだ。IDを持たない身軽さともいえるだろう。山守が羽生について言った「誰でもないし、何者にもなれない男」というのは、集団全体にも当てはまる。力みのない所作と卓越した解決能力。はたして彼らは自らの意志で動いているのか、それとも背後にもっと大きな目的があるのか?

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