『アバランチ』第1部完結で黒幕が明らかに 時間軸が交差するストーリーテリングの妙

『アバランチ』第1部完結で黒幕が明らかに

 鮮やかすぎる転換。『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第5話は「Episode0」。これまで目にした全てが助走だったとはっきりわかる終盤の展開に目を見張った。

 物語は3年前にさかのぼる。羽生(綾野剛)と山守(木村佳乃)、そしてここにはいない人物が1人。藤田(駿河太郎)だ。元警視庁公安部外事四課の藤田は羽生の同僚で、山守のパートナーだった。結婚を控えた2人が友人の誕生日を祝うささやかな愛にあふれた光景。

 アバランチがなぜ生まれたのか。私たちが知っているのは、第1話冒頭で羽生と藤田が爆発に巻き込まれる場面、そしてメンバーが初めてアジトに集合するシーンが主体で、その間に何があったかは知らされていない。この疑問に明確な回答を与えるエピソードゼロは、物語全体のエピローグであり、アバランチという組織の目的を明らかにするものだった。

 細部に入る前に全体を俯瞰したい。第1話冒頭で過去のエピソードを頭出しした後、現在を舞台に物語が繰り広げられ、ふたたび過去に戻る構成だった。衝撃的な描写で視聴者の注意を引き付けてから、アバランチという組織の特異性を脳裏に刻み付ける。第2話以降ではメンバー個々のキャラクターを掘り下げ、その中でアバランチが目指すものを現実とフィクションの同時並行で浸透させる。この時、物語自体は未来に向かって進行しているが、視聴者の注意は過去へ向いている。これは意図的なものであり、現在から順序立ててさかのぼることで、視聴者の関心を第1話の冒頭で提示された“謎”へと無意識に誘導している。

 この時点で肝心のアバランチの正体、彼らが最終的に何を目指すもので、なぜそうしようとするのか、すなわちチームを立ち上げた理由は伏せられたまま。それには理由があった。過去の出来事を起点として生まれたアバランチには明確なターゲット、つまり倒すべき敵がいる。あからさまに示されているため言うと、内閣官房副長官の大山(渡部篤郎)なのだが、問題はその理由である。藤田の死はアバランチの誕生に影響しており、アバランチは大山を狙っている。では藤田と大山にはどんな関係があるのか?

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