『アバランチ』は現実と地続きの構造を持つ 千葉雄大が演じたハッカーの揺らぎ

『アバランチ』千葉雄大が表現した揺らぎ

 『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第2話が放送された。第1話で覆面集団のアバランチを目撃した私たちの中で、漠然と、だが確かな実感とともに残ったのは、ある種の既知の体験、あるいは生々しい感触だった。アバランチはこの社会に実在しているのではないか? そう感じるのは、週刊誌によるスクープやSNSでリアルタイムで拡散する情報を見慣れたせいかもしれない。「雪崩」と名付けられたそれは、特定の集団であることを超えて、構成員を限定しない一つの流れを志向しており、外に向かう遠心力を感じさせるものだった。

 第2話「正体」の冒頭で映し出されたのは、山守(木村佳乃)が羽生(綾野剛)たちを集めるシーン。おそらくこれがアバランチの結成場面であり、リナ(高橋メアリージュン)の「私たちに何させる気?」に対する山守の答えが「アバランチ」だった。「この動画を見ている全ての人間に委ねる」と羽生、そして牧原(千葉雄大)は口にする。彼らの目的が既存の秩序の逆転にあることは間違いないが、その手法はあくまで判断材料の提供にとどまる。決定権は動画を視聴する側にあり、そしてここがポイントなのだが、解答は容易に提示されない。そのことは「皆さんの目的は何なんですか?」という西城(福士蒼汰)の問いに羽生が答えた「なんでも説明してほしいんだな。いまの奴らは」のやり取りにも端的に表れていた。現実と地続きのオープンな構造を持つ本作に、明確な意図が込められていることは確かだ。

 夜10時台を反映してか、第2話には闇夜のカットが頻出した。明暗の転換は藤井道人監督のシグネチャーと言っていいだろう。光と闇のコントラストがテーマとリンクして、人間社会の矛盾をあぶり出す構図は映画『デイアンドナイト』でも顕著だった。同作で阿部進之介が演じた主人公の明石は、違法行為に手を染めながら善悪の境界線上で自問自答する。これに対して、アバランチのメンバーは境界を軽々と飛び越える。倒すべき悪の存在が違法行為を正当化するというよりは、ただ単に目的達成のための最短距離を取ったら、結果こうなったとでも言うような意に介しなさが新鮮だ。そこでは暴力はシンプルに技と技、身体と身体のぶつかり合いに変わる。アクションシーンで相手に挑む瞬間の綾野剛の悪そうな笑顔からは、純粋な喜びが伝わってきた。第2話でエモーショナルな役割を担ったのは千葉雄大。内心のいらだちと比例して多弁になるハッカーの演技が秀逸で、感情を吐露する瞬間の空気の揺らぎがリアルだった。

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