『アバランチ』は物語の定型を打ち破る作品に ドラマが提示する“正義”への希望

『アバランチ』が提示する“正義”への希望

 蘭子(国生さゆり)と接触した羽生(綾野剛)の目的はKファイルで、大山(渡部篤郎)と内調もKファイルが奪われるのを阻止しようとする。助けを求める蘭子を、大山は「なぜ私が悠源館の危機を救わねばならんのです?」と突き放す。体制側にいた人間があっけなく切り捨てられるショッキングな場面で『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)第4話は始まった。

 闇にうごめくダークヒーロー。世直しをもくろむアバランチのメンバーには秘められた過去があった。これまでの放送で、牧原(千葉雄大)とリナ(高橋メアリージュン)の“傷”が明かされ、山守(木村佳乃)と羽生の過去の因縁にも言及された。

 どんなに崇高な目的でも、そこにはなんらかの個人的な動機が潜んでいる。トラウマこそが原動力であり、困難を乗り越えるところにドラマツルギーを見出してきたのが物語の歴史である。だが、神話から始まるあらゆるプロットと人間の内面に対する心理学的考察を経て、あらゆる鉱脈が掘り尽くされた現在、私たちは原点に立ち返るべきタイミングに来ている。それは物語がはじまる場所であり、人はなぜ何かをなそうとするのかという問いだ。元爆弾処理班・打本(田中要次)のエピソードにも満たない一連の言動を見ながら、そんなことを考えた。

 「ウチさんも大事な人、失ったの?」(リナ)。「あ、俺はそういうのない」(打本)。警察時代、爆弾処理のエキスパートだった打本は、山守にスカウトされてアバランチに加わった。上司の不正に抗議してたった1人戦った打本は、曲がったことを憎む純粋な正義感の持ち主である。山守が、警察を辞めて行くあてのない打本に声をかけたのは、打本なら自分が目指すものを共有できると直感的に感じたからだろう。

 近しい人を失ったことは牧原やリナがアバランチにいる理由になっている。また、山守と羽生は藤田(駿河太郎)の死を背負っている。そこには、大山とその周辺の人々の手が関わっている。だからと言って、アバランチという集団が復讐のために存在していると考えるのは早計だ。もちろん欲得のためではない。羽生は山守からの高額の報酬を断り、「そういうんじゃないから。俺たちが集まったのは」と口にしている。法の網をかいくぐるプロの犯罪集団でも、私怨に駆られる復讐の鬼でもなく、そこにあるのは彼らなりの正義だ。



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