『日本沈没』小栗旬演じる天海にスキャンダルが コロナ禍を彷彿とさせる台詞も

『日本沈没』コロナ禍を彷彿とさせる台詞も

 「私は総理から日本のために力を尽くせと頼まれ、それを忠実にまっとうしただけです」と世良は話す。データの改ざんは「国民を不安に陥れないためであり、日本の信用のため」。もし地球物理学の第一人者である世良が関東沈没の可能性を認めたなら、「私が認めたということが独り歩きしてしまう。それが臆測を生み、人々は1%の可能性を100%の不安にまで膨らませてしまうんです」。世間の反応を理由に挙げ、国民の不安を掻き立てないことが東山内閣のためになり、ひいては国益にかなうと説く世良の言葉はもっともらしく響く。しかし、結局のところそれは詭弁であり、そこに真実を探求する研究者としての誠実さはなかった。

 見方を変えれば、世良の対応はある意味で真実を突いてもいる。島が一つ沈むほどのインパクトのある出来事が起きたにもかかわらず、世間の反応は何ごともなかったかのように静かで、政府は封じ込めに成功したといえる。関東沈没が起きる確率は「たった1割」。世良は「君たちは起こるはずもない関東沈没に怯え、やる必要もない危機対策に奔走し、あげくに首都経済を停滞させるんだ」と天海に詰め寄る。コロナ禍にあって経済を回すことと人命を優先させることが対立した昨今の議論を彷彿とさせる場面だった。

 政治とは税金の使い道を決めることであり、マクロとミクロの両面から最善の方策を実行することが求められる。この点、官僚の天海を主役に据えたことで本作のテーマはより鮮明になった。震度5の地震が関東地方を襲ったのと同じ週にスタートした2021年版『日本沈没』には、単なる政治サスペンスという以上に仮想現実を舞台にした思考実験の趣があり、未体験の脅威に立ち向かう上で何が必要かを私たちに問いかけている。

■放送情報
日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、高橋努、浜田学、河井青葉、六角慎司、山岸門人、竹井亮介、高野ゆらこ、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、小林隆、伊集院光、風吹ジュン、比嘉愛未、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之
ナレーション:ホラン千秋
原作:小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志
プロデュース:東仲恵吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nihon_chinbotsu_tbs/
公式Twitter:@NCkibou_tbs
公式Instagram:nckibou_tbs

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