沢城みゆき、10年目の峰不二子への挑戦 「1回1回、楽しむ力を信じて」

沢城みゆきが語る峰不二子

 漫画家、モンキー・パンチが『週刊漫画アクション』(双葉社刊)で連載していた『ルパン三世』。そのルパン三世は1971年に始めてテレビアニメ化され、今年はアニメ化50周年というアニバーサリーイヤーにあたる。アニメ版『ルパン三世』の長い歴史の中では、幾度かメインキャストが入れ替わっているが、峰不二子役は現在の沢城みゆきで三代目となる。シリーズ最新作『ルパン三世 PART6』の放送を前に、沢城が演じた今までの不二子像を振り返りつつ、役柄へのアプローチ、『PART6』の見どころなどを語ってもらった。(のざわよしのり)

作品によって全く異なる峰不二子像

――沢城さんが増山江威子さんから峰不二子役を引き継がれ、初めて担当された『ルパン三世 血の刻印』が2011年放送でしたから、今年でちょうど10年目になります。『ルパン三世』がアニメ化50周年を迎える大きな節目の年に、不二子役も10年目ということで感慨のようなものはありますか?

沢城みゆき(以下、沢城):ひとつの作品が50周年という歴史を迎えるタイミングに参加できる有難さと同時に、その中で10年も自分がやってきたんだ、という驚き……10年ってなかなかのものですよね。国民的に広く知られている、長く続いている作品というと『ドラえもん』や『サザエさん』など限られていますし、そういうみなさんが知っている作品『ルパン三世』で10年というのは、すごくありがたいと思います。他に『ストライク・ウィッチーズ』も10数年やらせて頂いていますし、デビュー作の『デ・ジ・キャラット』も、キャラクターの台詞の語尾に「にょ」と付くので、それにちなんで24周年のアニバーサリーがありますし。長く続いている作品やキャラクターは、どれもファンのみなさんが気長に並走して下さっているおかげだと思います。

――以前、不二子役について沢城さんが「私は不二子さんのカバン持ちです」と話されていたのが印象的だったのですが、不二子に10年付き合ってきて、カバン持ちをやっているという心境に変化はありましたか?

沢城:基本的には同じなんですけど……。ルパンは毎回チャレンジングな作品で、『ルパン三世PART5』では不二子が「あなたにとっての私は何?」ということをルパンに突きつけて、付かず離れずのスタンダードな関係の2人が新しい切り口で描かれましたし、それこそ増山さんの不二子のサンプルにもないような台詞がいっぱいあって挑戦できました。今回のシリーズでは名だたる作家の方々が脚本に参加して下さって、それぞれに“俺色の峰不二子”というのがある。そういうのをやっていくうちに、峰不二子さんという大女優が色々な役を演じている感覚に近くなっていて、私は不二子さんのカバン持ちというより傍にいるスタイリストの気持ちかなぁ。「今回はこんな服はどうですかね」、「こっちも良いと思うけど、これも似合うと思う」って提案はできる距離まで来た感じ……ですかね(笑)。

――2時間長編のルパンと、一般的なテレビシリーズ、それからちょっと大人向けな小池健監督の『LUPIN THE IIIRD』シリーズ、スピンオフ作品の『LUPIN the Third~峰不二子という女~』と、作風が違うさまざまなルパン三世がありますが、それぞれ不二子役へのアプローチは違ってきますか?

沢城:そうですね、全然違います(笑)。なんとなく、裏声で喋っているというところは統一されているのですが、小池ルパンの時はもう少し低い音色でも許されますし、『峰不二子という女』の時は狂乱する、取り乱すという表現までやらないといけないので、声が裏声じゃなきゃとか、そういうことを言っていられないほど芝居に集中しなければならなかった。毎度毎度、大事なことが違う……という感じです。『金曜ロードショー』(2時間スペシャル)の不二子は少し言葉を選んでいますけど、小池ルパンでは言葉を選ばない、バックヤードの不二子ですよね。「今日は煙草吸ってもいいのかしら?」みたいな。『LUPIN THE IIIRD 峰不二子の嘘』は、ジーンという男の子を演じていた半場友恵さんにとても助けられながら、子どもに右往左往する不二子を演じました。

――『峰不二子という女』や『峰不二子の嘘』のような不二子メインの作品に臨まれる時は、普段のレギュラー出演の時とは心構えが違いますか?

沢城:良い意味で要所要所で物語の華になっていく役回りの時……例えば『金曜ロードショー』の時がそうなんですけど、「ねぇルパン、私もこれ欲しいの」と話に絡んできて、最後は「ゴメンね~、バイバーイ♪」と言いながら去って行く。そういう定型のものから外れて、どこまで見せて……どこまで見せないかの塩梅をいつも清水(音響監督)さんと相談します。どこまで脱いでほしいと思っている本なのか、監督なのか、それを毎回なるたけ丁寧に問診(笑)する感じです。不二子って謎の女なので、(役作りを)放棄しているわけじゃないのですが、1回1回、楽しむ力を信じてやっています。

――幅広い年齢層向けの長編の時と、コアなファン層向けの時とでは、不二子も物理的に脱ぐ面積が違いますよね。

沢城:男の人の脱がせ方と女の人の脱がせ方は随分違っていて、男の人の場合はバーンとおっぱいがふたつ見えていれば良いわけじゃなくて、ちょっと服の胸元が開いてるのがセクシーと言う印象がありますが、シリーズ構成を務められた岡田麿里さんが書かれた『峰不二子という女』は、むしろ裸って一張羅でしょ? という雰囲気。男性と女性でこんなにもセクシーの定義、イイ女の意味するところも違うのかと興味深く思ってきました。

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