『猫の恩返し』貫かれた後味の良さ ユーモラスで痛快な物語の魅力

『猫の恩返し』貫かれた後味の良さ

 スタジオジブリ制作の長編アニメ映画『猫の恩返し』(2002年)は、同じジブリ制作の映画『耳をすませば』(1995年)と同様に、漫画家の柊あおいが原作者としてクレジットされている。これは『耳をすませば』に登場した猫のキャラクター、バロンを使った姉妹作を描いてほしいという宮崎駿のリクエストに応えて、柊あおいが発表したスピンオフ作品『バロン 猫の男爵』をベースとしたアニメ映画だからだ。柊によると、『耳をすませば』の主人公・月島雫が書いた物語という設定なのだそうだが、そういう予備知識のない人が観ても、『猫の恩返し』は単独で充分楽しめる映画に仕上がっている。

 高校生の吉岡ハルは、学校の帰り道にトラックに轢かれそうになった猫を助ける。猫は2本足で立ち上がると、丁寧な人語で助けてもらった礼を述べて姿を消す。その夜、猫の国の一行がハルの家を訪れ、彼女が助けた猫が猫の国のルーン王子であることを告げると、恩返しのための目録を手渡してきた。翌日からハルのもとには、猫しか喜ばないような迷惑な贈り物が次々と届けられ、やがて猫の国へ招待されてルーン王子の妃に……という展開へ発展する。

 本作は劇場公開時に短編映画『ギブリーズ episode2』との2本立て興行だったことから、他の多くのジブリ映画よりも若干短い尺で作られている。『猫の恩返し』が75分、『ギブリーズ episode2』が25分で、合わせて100分の上映時間である。前年に公開された宮崎駿監督作『千と千尋の神隠し』の上映時間が125分だったのを思えば、75分の映画は随分とコンパクトに感じるが、ハルが友人と過ごす日常の世界から非日常の猫の国へ行くまでの件や、猫の国での冒険は緩急のついた場面転換で描かれ、物足りない印象は全く受けない。むしろこの上映時間の中に、よくぞこれだけ楽しいエピソードが詰め込まれているものだと、構成の妙味に感心することだろう。ハルは数々の事件に巻き込まれて困った表情を見せるが、全体的にユーモラスな描かれ方をしているので、作品全体にシリアスな空気は漂っていない。この作品全体を包むコミカルで明るい雰囲気が、鑑賞後の後味を良くしているとも思える。

 ここで少しばかり、声の出演者について触れておこう。本作も他のジブリ作品に倣って声優が本業ではない俳優陣がメインキャラクターを演じているが、猫たちのキャスティングはなかなか個性的で役にはまっている人が多い。例えばハルを猫の国へと連れてゆく茶色の猫ナトルは、声に特徴がある女優の濱田マリが演じているのだが、学校の裏庭でハルとナトルが会話を交わす場面の濱田の名調子ぶりは聞き物だ。事態の大変さに頭を抱えるハルに助け舟を出し、バロンを訪ねるようアドバイスをする白猫ユキの役は前田亜季。劇中でもハルが「キレイな声」と称するように、可愛らしくて澄んだ声が耳に残る。ハルを人間界に戻してあげようと心を配るユキの正体は終盤で明かされるが、これは本編を最初からしっかり観ている人には察しがつくだろう。



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