アニメにおける「映画とは何か」という問い 2020年を振り返るアニメ評論家座談会【後編】

アニメにおける「映画とは何か」という問い 2020年を振り返るアニメ評論家座談会【後編】

 2020年のアニメ界を振り返るために、レギュラー執筆陣より、アニメ評論家の藤津亮太氏、映画ライターの杉本穂高氏、批評家・跡見学園女子大学文学部専任講師の渡邉大輔氏を迎えて、座談会を開催した(2020年12月某日収録)。

 『鬼滅の刃』現象、ジャンプアニメについて掘り下げた前編(『鬼滅の刃』大ヒットと『ジャンプ』アニメの隆盛 2020年を振り返るアニメ評論家座談会【前編】)に続き、後編では、近年数を増やしているリブート企画の盛り上がり、2020年に活躍した作家にフォーカスをし、語り合ってもらった。(編集部)

加速するコンテンツのリビルド

――2020年に限らないかもしれませんが、この1年は『魔女見習いをさがして』など過去の作品のリブート企画が目立った年でもありました。

藤津亮太(以下、藤津):アニメ市場における、ソフトなどにお金を払えるメインターゲットが30代後半からアラフォーぐらいになってきているんですよね。だから90年代から2000 年ごろにかけて、原作漫画の連載と並走してアニメを放送していた作品を改めて、最終回まできちんとプラン立てて送り出そうという企画が、数年前から出てきているのは確かです。おそらく、OVAとして制作された『うしおととら』や『ジョジョの奇妙な冒険』、時期的には少し前になる『BANANA FISH』といった作品もその枠に入っていて。その流れの中に、『ダイの大冒険』や『デジモンアドベンチャー』といったよりターゲットが広い作品が作られていく流れがあると思います。で、そういう傾向を前提として、僕はそれだけではない理由もあると思っていて。ある一時期人気を得た作品の“作品寿命”が伸ばす意味もあるのかなと。昔は連載が終わったら、作品寿命がそこで終わりだったけれど、ポテンシャルがある作品であれば、うまく今の人に届けば、新たな形でファンを引き付けることができるのではという狙いもあると思うんです。特に『デジモン』や『ダイの大冒険』などは、何らかの形で長く愛されていくものにしたいと。

『デジモンアドベンチャー:』(c)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション

杉本穂高(以下、杉本):親子2世代コンテンツとして、作品を広げることもできますよね。

藤津:『ダイの大冒険』などは、かなりうまくリーチしていますよね。知り合いのライターさんの未就学のお子さんが普通にはまっているそうです。

杉本:逆に今は、子どもの数自体が少ないので、親世代にも訴求できるタイトルじゃないと、子ども向けのコンテンツはなかなか企画を立てにくいんだろうなという気もしています。

藤津:あと、小学生はやっぱりYouTubeを見ている子が多く、昔よりもアニメから早く卒業するようになったんですよ。かつてテレビの前に座っていた昭和の子どもの行動が、そのままYouTubeに移り変わっている感じがします。

杉本:ブシロードの木谷高明社長が、子ども向けの新規タイトルの立ち上げは、かつてのテレビのような力がないと相当に難しい、みんなYouTubeを小さい時から見ている、という話をインタビューでされていました。そして、若い世代と40代のマーケットサイズを比べるとかなり差があると言うんです。木谷社長曰く、「20代と40代のお金の使い方と人口比を考えると、40代のマーケットは20代の4倍ある。そこが取れないと大ヒットはならない」そうです。リブート企画の多さはその40代にも訴求したいということですよね(参照:80年代懐メロで20代も40代も取る ブシロード新作は「DJ」で勝負|日経 X TREND)。

渡邉大輔(以下、渡邉):リブートということではないですが、たとえばゼロ年代の第1次韓流ブームの時点でも、『冬のソナタ』の物語が当時の主婦層に受けた背景として、70年代くらいのテレビのメロドラマとの類似性が既に指摘されていました。その意味では、おそらくそのころから旧世代にも刺さるコンテンツの重要性は意識され始めていたのかなと思います。また、リブート企画でいうと、私のゼミでは卒業論文のテーマも含め、リメイクアニメに関心を持つ学生が2018年くらいからちらほら出てきていますね。ですので、今の学生のアンテナにはもう3年前から、アニメのリメイクの盛り上がりが引っかかっているのかなと。

 また、私も論考を寄稿した『リメイク映画の創造力』という映画のリメイクについての論文集が2017年にすでに出ています。映画研究の領域でも、国内外でここ数年、これまでほぼ手付かずだったリメイクの問題が急速に注目を浴びているんですね。なぜいまこんなにリメイクが盛り上がっているのか理由を考えていくと、ひとつは話に出ているように、どんどん趣味が細分化していく中で、より広い間口のターゲットをつかむため。もう一つもやはりもう話に出ているYouTubeの登場だと思うんですね。今の若い子ほどYouTubeを見ているので、ふとしたきっかけで、過去の名作を知るという機会が私たちの世代より格段に増えています。そういう意味で、過去の作品のリメイクやリブートがやりやすくなっているというのはあると思います。あと最近は、まさにYouTuberやTikTokの動画からお笑いのリズムネタ、ゲームのリプレイまで、まったく観たことのない新しいものよりは、既に観られている作品や、既に観たことがあり、安心できるもの、繰り返し観たくなるものへの評価が高くなっている感じがします。文化消費の反復性と関係しているのでしょうが、何度もループしたり反復したりする中で、コンテンツや演出の微妙なズレこそを楽しむようになっている。文化消費のあり方そのものが、リメイク的、リブート的になっていように感じます。

杉本:映画市場でリメイク企画の増加の要因は何だと考えられているのですか?

渡邉:『リメイク映画の創造力』では、編者のお一人である映画研究者の北村匡平さんの序章が、近年のリメイク研究の動向をよくまとめてくれていますね。たとえば近年のハリウッドのリメイクブームのきっかけとして、日本の『リング』などJホラーのリメイクがやはり大きかったようです。ハリウッドの場合は、ひとつはリスクヘッジ。すでに元の映画が存在しているということで、興行的なリスクが軽減できることと、他の国の市場で1回ヒットしている、1回テストされていることへの安心感。また、リメイクすることによって、オリジナル映画の製作国の市場の興行収入も見込める。なので、アニメの方でも、他の国でのヒットも見込んで、リメイクアニメがこれからどんどん出てくるのかなと感じます。

杉本:渡邉さんのお話にあった、新しいものよりも、どこか見たことがあるものの方が評価が高くなるという傾向は確かに近年感じますよね。

渡邉:そうなんですよ。全然見たことがないものよりは、パターン化、お約束化しているもの、何かみんなが既に知っているものの方がウケるというか。

杉本:SNSなどでのつながりを重視する共感の時代だからでしょうか。みんなが知っているものの方が盛り上がれるわけですよね。

渡邉:まさにそうだと思います。

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