MCUにモンスターバース、『ワイスピ』まで ハリウッド大作ユニバース化の背景を探る
ハリウッド大作シリーズが、どんどん長期化している。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)、DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)、『ワイルド・スピード』シリーズ(ワイスピ)、キングコングやゴジラのモンスターバース、フランチャイズの古典『スター・ウォーズ』シリーズ(SW)に『007』シリーズ、トム・クルーズの『ミッション:インポッシブル』シリーズ(M:i)に、『スタートレック』シリーズも健在だ。『ファンタスティック・ビースト』(ファンタビ)として引き継がれた『ハリー・ポッター』の「魔法ワールド」も忘れてはいけない。
もはや、ブロックバスター映画は基本的にシリーズであることが前提になっているかのようだ。もちろん、大ヒットしたタイトルを1本で終わらせるのは惜しい。利益を追求するスタジオと、登場人物たちのさらなる活躍を観たいファンにとっては、長期化は基本的には望ましいのだろう。
近年では、単純に何本も続編を製作するのではなく、多くのシリーズを重ねて一つの巨大な世界観を作り上げる「ワールドビルディング」、あるいは「シェアード・ユニバース」という手法がハリウッドで定着している。これを「ユニバース化」あるいは「サーガ化」と呼ぼうと思う。
映画事業とは、興行収入だけで成り立つものではなく、作品自体の2次利用、3次利用も含め、ゲーム化や関連商品の販売など、様々なメディアを横断して展開される。
こうした長期シリーズはいかにして構成されているのだろうか。また、私たちはそうした作品群にどんな楽しみを見出しているのだろうか。
フランチャイズ、それぞれの展開を俯瞰する
今、ハリウッドでどんなタイトルがサーガとして展開されているか俯瞰してみよう。
代表的なのはもちろんMCUだ。マーベル・コミックが生み出したスーパーヒーローたちがクロスオーバーする世界で、各キャラクターの単独主演作品と『アベンジャーズ』のようにヒーローたちが集結する作品をベースに展開している。元々、原作コミックがヒーローたちのクロスオーバーを数多く扱っており、その手法を映画にも持ち込んだことが成功、その人気はシリーズを重ねるごとに拡大していき、世界興収を塗り替えるまでにいたった。
かつては、映画事業に関してはライバルであるDCコミックスの後塵を拝していたが、ユニバース化という戦略で一気に形成を逆転させた。
そのライバル、DCコミックスは、ユニバース化という点では後れを取った。2000年代、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』3部作の大成功に縛られすぎたのかもしれない。『マン・オブ・スティール』から始まる『スーパーマン』のリブートから『ジャスティス・リーグ』を発表したが、『アベンジャーズ』ほどのインパクトを残せなかった。その後は、気を取り直して『ワンダーウーマン』や『アクアマン』など、各ヒーロー単独主演の作品を作り成功させている。
しかし、DCEUはここからさらに広がっていくようだ。今後公開予定のエズラ・ミラー主演の『ザ・フラッシュ(原題)』には複数のバットマンが登場し、並行世界として数多の作品をつなぐ「マルチバース」化を計画しているようだ。
マルチバース化は、マーベル作品である『スパイダーマン』もその噂があり、今後さらに世界観を拡大・統一していくための布石として注目されることになりそうだ。