ディズニー、スカーレット・ヨハンソンの『ブラック・ウィドウ』訴訟は「メリットなし」
スカーレット・ヨハンソンが7月29日、ディズニーがマーベル映画『ブラック・ウィドウ』を劇場公開と同時にDisney+(ディズニープラス)で公開したことが契約違反であるとして、ディズニーを相手に訴訟を起こした。
ヨハンソンは、ディズニーが、Disney+に観客を誘導することで、加入者数を増やし、株価を上昇させたかったのだと主張。ヨハンソンの報酬は、劇場での興行収入に比例する金額を受け取る契約を結んでおり、「公開が劇場公開になることをマーベルから約束させた」とも訴状では触れられている。また、「ディズニーの財務開示により、この戦略を指揮したディズニーの幹部たちが個人的に利益を得ることが明らかになった」とも述べられている。
ヨハンソンの弁護士であるカソウィッツ・ベンソン・トーレスLLPのジョン・ベルリンスキー氏は、声明の中で「ディズニーが『ブラック・ウィドウ』のような映画を直接Disney+で公開し、加入者を増やして株価を上げようとしていることは明らかです。しかし、この近視眼的な戦略のために、同社の映画の成功に貢献したアーティストの契約を無視することは、彼らの権利を侵害するものであり、私たちは法廷でそれを証明することを楽しみにしています。ハリウッドの才能あるアーティストたちがディズニーに立ち向かい、契約を守る法的義務があることを明確にするケースは、きっとこれが最後ではないでしょう」と発表している。
一方、ウォルト・ディズニー社は、「ブラック・ウィドウ」の公開をめぐるスカーレット・ヨハンソンの訴訟に対し、訴訟はCOVID-19を無視していると反撃。さらにヨハンソンに今回のDisney+でのプレミア アクセス配信にあたり、2000万ドルの補償もしていることを明かした。ディズニーの広報担当者は、「この訴訟には全くメリットがありません。コロナ禍の世界的な影響の恐ろしさと長期化を無視した、悲しく、心苦しいものです。ディズニーはヨハンソン氏との契約を完全に遵守しており、さらに、ブラック・ウィドウのDisney+でのプレミア アクセスでの公開により、彼女がこれまでに受け取った2,000万ドルに加えて、追加報酬を得る能力が大幅に向上しました」と声明。
ディズニー社がコロナ禍に言及したのは、パンデミックのために劇場での映画鑑賞が制限されていることを考慮して、日を改めて公開することが動機となったことへの暗示だろう。ヨハンソンの報酬が公表されるという異例の事態にも発展してきた今回の騒動。決着にはまだ時間がかかりそうだ。
■公開情報
『ブラック・ウィドウ』
映画館&ディズニープラス プレミアアクセスにて公開中
※プレミアアクセスは追加支払いが必要
監督:ケイト・ショートランド
出演:スカーレット・ヨハンソン、フローレンス・ピュー、レイチェル・ワイズ
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021