『イチケイのカラス』は“裁判官版『HERO』”だった 続編も期待してしまう最終回に
第1話で入間(竹野内豊)が坂間(黒木華)と出会ったシーンで裁判官の仕事について語る「悩んで悩みまくって、一番いい答えを見つけること」や、第2話での「裁判官だって間違うことはあります。それ以上に大きな罪は、間違えを認めないこと」などなど、これまで登場した印象的な台詞の数々から幕を開けた6月14日放送の『イチケイのカラス』(フジテレビ系)最終話。まずこの全11話を通した感想を言えば、やはり“裁判官版『HERO』”と呼ぶにふさわしい、むしろはっきりとそれをなぞる、フジテレビらしい王道のリーガルドラマであったと言わずにいられない。
青山(板谷由夏)と一緒にいるところを週刊誌に撮られ、弁護士との癒着があると疑いをかけられてしまう入間。任期終了が近付いたタイミングでのゴシップに、なにか政治的な力が働いているのではないかと勘繰るイチケイの面々。そんななかで入間が最後に担当するのはある大学生が起こした自転車事故。被告人は現場で工事をしていたと証言するが、検察の調べではそのような記録は残されていなかった。現場のすぐ近くで大型複合施設の工事が行われていることに気が付いた坂間。それは坂間が担当している業務上過失致死傷事件の現場であり、その背景には違法な過重労働の可能性と、プロジェクトを率いる代議士の安斎高臣(佐々木蔵之介)の存在があった。
入間が弁護士から裁判官になったきっかけとなった事件の真相が描かれた第7話。そこで証言台に立った、当時最高裁判事の日高(草刈民代)は去り際に入間と坂間に、まだ「定かじゃない上」がいることを示唆する。その正体が、例によって大物の二世政治家であるというのは期待通りの展開だ。しかも前回のエピソードで特捜部にまわった城島(升毅)が追っていると言っていた、鷹和建設が工事現場の元請けをしており、同社の巨額な脱税事件も密接に関わっているなど、ドラマ後半に散りばめられてきた点と点が一本の線でつながると。
「大きな力で真実をねじ曲げるなら、司法はそれを許さない」という坂間の言葉にもある通り、最後まで一貫して真実を追い続ける一方で、イチケイの仲間たちに圧力が及ぶことを危惧し、“いつも通り”でいることに躊躇いをもつ入間。これは今回の“おいっ子&めいっ子トーク”として登場したイソップ寓話「3人のレンガ職人」を通して掲げられる“仕事への誇り”というテーマと、このドラマが説いてきた他者への“想像力”を働かせることとがぶつかり合ってしまう葛藤である。