『イチケイのカラス』が描いた“理想の裁判” 最終回につながりそうなフラグも

『イチケイのカラス』が描いた“理想の裁判” 最終回につながりそうなフラグも

 “名無しの権兵衛”による傷害事件というレアケースに挑むことになった“イチケイ”の面々。入間(竹野内豊)のかつての同僚である青山(板谷由夏)が国選弁護を担当するというその事件は、河川敷で路上生活をしていた被告人(板尾創路)が、投石してきた少年たちのひとりをスパナで殴打したというものだ。公判で起訴事実について間違いがあると主張する被告人。さらには「嘘が嫌い」と語るが、それでも彼は自分の素性はおろか名前についても頑なに黙秘をつづけるのである。

 6月7日に放送された『イチケイのカラス』(フジテレビ系)第10話は、最終回のひとつ前のエピソードとは思えないほどクライマックスの影がちらつかない通常営業となった。しかし、前回のエピソードで裁判員制度を通して市民の司法参加の必要性を説いたのと同じように、今回は青山という弁護士と入間という裁判官の関係を軸にして司法に携わる者たちの法廷倫理を問いかけるという、深部に触れる。そして終盤、すべてが明らかになった瞬間の坂間(黒木華)のナレーションで語られる「この法廷からすべての嘘がなくなった」という言葉に、裁判への理想が語られたようにも思える。

 路上生活者に対しての投石事件という発端の題材から、過疎地域における無医村という社会の課題や無資格医という問題に至るまで、現実世界でも耳にするテーマをひとつのエピソードに集約させる。そして産まれたての犬の名前を考えるところから名前を持たない被告人にたどり着く序盤の、“名前”というアイデンティティの存在に、17年前に起きた出来事との密接なつながりから生じるドラマ性。さらには方言から被告人の素性を辿るというミステリの定番にいたるまで、さらりと描くわりにはかなり多くのエッセンスが込められているあたり、このドラマの力の入り方がよくわかるものだ。

 ところで今回の被告人である御手洗のように、無資格で医療行為を行った者は3年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金刑に処される可能性がある(医師法第17条、同31条)。とはいえその件については17年以上前ということもあり時効になっていると劇中では語られ、論点は起訴された事件の発生当時に少年に対して行われた医療行為にある。しかし仲間内の別の少年からスパナで殴打されて気胸を起こした少年の胸腔から空気を抜く行為、これは彼の生命を助けるという目的があり、かつかなりの緊急性を要していたものと見える。そうなると、緊急避難として違法性が阻却されないだろうかとついつい考えてしまうわけで。

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