野村萬斎と鈴木京香のロマンチックな演出も 『死との約束』で展開された三谷幸喜ワールド

野村萬斎と鈴木京香のロマンチックな演出も 『死との約束』で展開された三谷幸喜ワールド

 流れるような謎解きに誰もが息を呑んで聞き入ったことだろう。3月6日にフジテレビ系で『死との約束』が放送された。本作は、アガサ・クリスティー原作の同名小説を三谷幸喜が脚本化し、野村萬斎が主人公の名探偵・勝呂武尊を演じたSPドラマシリーズの第3弾である。過去に放送された人気作『オリエント急行殺人事件』(2015年)や『黒井戸殺し』(2018年)に続き、クリスティーの巧妙なトリックと三谷ワールドが交じり合い極上のミステリーへと昇華された。

 休暇で熊野古道を訪れた勝呂(野村萬斎)は、滞在先のホテルで本堂家という一風変わった家族と、医師の沙羅絹子(比嘉愛未)に出会う。さらにそこには、かつて“とある事件”で顔見知りとなった代議士の上杉穂波(鈴木京香)と、その連れの編集者・飛鳥ハナ(長野里美)もいた。一行は熊野古道を散策するが、ある日、とある人物が死体として発見される。勝呂は殺人事件と読み、事件解決に向けて動き出すのであった。

 『死との約束』は、まさに三谷の作風との相性の良さを感じさせる作品になっていた。『12人の優しい日本人』(1991年)や『THE 有頂天ホテル』(2006年)などワンシチュエーションで進行する群像劇が得意な三谷にとって、古風なホテルと参詣道という限られた空間の中で、複雑に絡み合う登場人物をいかに魅力的に描くかが肝になる『死との約束』は非常に相性の良い題材だろう。舞台はペトラ遺跡から“巡礼の道”として世界遺産にも登録されている熊野古道に移される。緑溢れる美しい世界は荘厳かつ神秘的で、思わず居住まいを正すほどの力を感じさせる。そこに、伝説上の生き物である天狗や神話において信仰されるヤタガラスを登場させることでミステリアスな雰囲気を盛り上げた。

 さらに強烈な個性を放つ本堂夫人と、その子供たちの存在は本作にかなりのインパクトを与えた。母親と子供たちの関係を通して本堂夫人がいかに異常な存在であったかを繰り返し丁寧に描き出すことで、支配的な母親と脱却できずにもがく子供たちの構図が浮かび上がる。役者の演じる力も相まって、家族一人一人がどんな性格で何を望んでいるのかがはっきりと伝わってくる。これだけしっかりと全てのキャラクターの存在感を際立てたことは、後の勝呂の謎解きにおける犯人の動機とも繋がる重要な要素を占めたことだろう。

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