“『まどマギ』の再来”の声も 『ワンダーエッグ・プライオリティ』に漂う野島伸司“らしさ”
1月からスタートしたTVアニメ『ワンダーエッグ・プライオリティ』(以下『ワンエグ』)が毎週スリリングな展開でアニメファンを沸かせている。本作は『高校教師』(TBS系)、『未成年』(TBS系)といった1990年代の大ヒットドラマに関わり、アニメには初挑戦となる脚本家・野島伸司と、新進気鋭のアニメ監督・若林信がタッグを組んで制作されたオリジナルアニメ。放送開始前から注目を集めた本作の魅力、そしてちょうど10年前の2011年冬に一般層も巻き込んだ大ヒット作『魔法少女まどか☆マギカ』の再来という呼び声について考察する。
本作の物語は14歳の引きこもり少女・大戸アイが、深夜の散歩中に“エッグ”を手に入れたところからスタート。アイはエッグの世界でさまざまな少女と出会い、そのトラウマに沿った敵を倒していくことで、かつて自殺を図った友人・小糸を蘇らせようとする。
その小糸は担任教師と恋愛関係にあった可能性がアイの回想で早々に示唆され『高校教師』のセルフオマージュを想起させるが、これは野島伸司エッセンスとしては序の口。現実世界でアイが出会い、交流を深めていく少女たちは毒親や同性愛にまつわる問題を抱えており、作中ではほかにもパパ活や「ヒーローを妬んで襲う」アンチといった現代的かつ刺激的なワードが並ぶ。衝撃的な要素を散りばめた物語で日本中の注目を浴びた野島伸司らしさ満点だ。
また当時の野島ドラマを観ていた人々にとっては、そうしたモチーフだけでなくテイストにも“らしさ”を感じられるだろう。そもそも野島は本作を手がけることについて「いつからかドラマにも『コンプライアンス』が侵食して、僕のような物書きは翼をもがれた感覚で、より自由度の高い場所を模索していました」とコメントしている(引用:ワンダーエッグ・プライオリティ|公式サイト)。彼がヒット作で綴ってきたのは若者の抑圧への抵抗という同世代の共感を呼ぶものであり、それは『ワンエグ』とも共通している。折り返し地点となる第6話のクライマックスで、それまで比較的内向的だったアイが見せた晴れやかな表情と決意に、胸のすく思いを抱いたアニメファンもいたはずだ。
また本作は「映画クオリティ」と語れられるほどの絵も大きな魅力だ。制作発表会で野島が発した「アニメは、実写では絶対にできない表現もできる。物書きとしては限界値をとっぱらえる」というコメントにある「実写では絶対にできない表現」の一部は、エッグ世界におけるバトルのことであろう。この毎話のように展開するアクションシーンにおけるケレン味たっぷりのアニメーションは眼を見張るもの。本作ではアクションディレクターというセクションが設けられ、近年ではTVアニメ『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』でアクションシーンの原画を担当した川上雄介が参加して高いクオリティを担保している。