『ゆるキャン△』は“さみしさ”の醍醐味を教えてくれる 心の寒さに寄り添う温もり

 あfろ原作によるTVアニメ『ゆるキャン△ SEASON2』(AT-Xほか)が放送されている。本作は、キャンプを通じて出会った女子高生たちがアウトドアを楽しむ日常を描いたアニメ。原作コミックは累計発行部数500万部を突破、2018年にTVアニメ第1期が放送され、2020年には福原遥、大原優乃をはじめとする若手キャストで実写ドラマ化を果たし、スピンオフアニメ『へやキャン△』も放送された。

 原作に忠実なアニメはもちろんのこと、人気作だけに不安視されていた実写ドラマも再現度が非常に高く、3月29日の『ゆるキャン△スペシャル』(テレビ東京系)を皮切りとした2期の放送も決定しており、いずれも話題を呼んでいる。

 キャンプをはじめとするアウトドアといえば、“3密”を避けられるとしてコロナ禍でもさほど打撃を受けなかったと言われている市場だ。あらかじめ混雑状況を確認したり、共用施設でのマスク着用、大人数でのグルキャン(グループキャンプ)を控えるなどの対策は必要だが、たしかに換気のいい屋外で過ごせるため感染リスクは比較的低いと言えるかもしれない。

 2020年新語・流行語大賞にトップ10入りを果たした、一人でキャンプを楽しむ「ソロキャン」(ソロキャンプ)ならなおのこと。偶然にも『ゆるキャン△』の2期では、ソロキャンの魅力を再認識できるエピソードが描かれている。

 本作は2人の主人公、志摩リン(東山奈央)と各務原なでしこ(花守ゆみり)が同じキャンプでもそれぞれ違う楽しみ方をしているのが特徴だ。リンは高校生にしてキャンプ上級者であり、バイクで一人キャンプ場に赴き、手早くテントを立て、自然の中で読書を楽しむなどソロキャンの楽しみ方を熟知している。

 対して、富士山を見に来て迷子になったところをキャンプ中のリンに助けられたことで、キャンプに興味を持ったなでしこは高校で「野外活動サークル」(通称、野クル)に入部。サークルメンバーの大垣千明(原紗友里)、犬山あおい(豊崎愛生)と一緒にキャンプについての知識を学びながら、体験を共有できるグルキャンを好む。

 だが、『ゆるキャン△』の魅力は誰一人として自分の好きなことや楽しみ方を他の人に強要しないところ。実際になでしこは最初こそリンを野クルの活動に勧誘するが、リンが思わず嫌な顔をして以降、一度も無理に誘ったことはない。私自身もそうだったが、インドア派にとって「アウトドア=大勢でワイワイするのが好きな人の楽しみ」というちょっとした抵抗感があるので、もしも『ゆるキャン△』がグルキャンの魅力を押し売りするだけの作品だったらここまでの人気にはならなかっただろう。

 あくまでもリンはなでしこと2人でキャンプに行ったり、「ノリが苦手」と思っていた千明の良い面を知り、少しずつグルキャンに興味を持つようになる。最終的に寒さに弱く、「冬キャンって何がいいの?」と疑問に思っていたリンの友人・斉藤恵那(高橋李依)、お酒が何より好きで、休日は家でゆっくり過ごしたい派の野クル顧問・鳥羽美波(伊藤静)も共に6人でクリキャン(クリスマスキャンプ)を敢行する、というのがアニメ1期のラストだった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる