“赤井秀一”の底知れなさを堪能 『名探偵コナン』緋色シリーズはなぜ必見なのか

『名探偵コナン』緋色シリーズはなぜ必見か

 TVアニメ『名探偵コナン』(日本テレビ系)の総集編『名探偵コナン 緋色の不在証明』が、期間限定で劇場公開中だ。当初は2月11日から3月4日までの3週間の予定だったが、ファンの熱い支持を受け、晴れて上映期間の延長も発表された。

 今作は、4月16日に公開予定の劇場版『名探偵コナン 緋色の弾丸(ひいろのだんがん)』にて、物語の鍵を握る“赤井ファミリー”をフィーチャー。FBI捜査官にして凄腕のスナイパー・赤井秀一を中心に、それぞれが複雑に絡み合う謎多き一家のキャラクターや関係性が描かれている。

『名探偵コナン 緋色の不在証明』(c)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

 なかでも注目は、クライマックスの「緋色」シリーズだろう。原作でも屈指の人気を誇るエピソードで、来葉峠で死亡したと思われていた赤井秀一が“帰還”するまでを描いている。伏線の回収に次ぐ回収、比類なき頭脳が交錯して生まれる駆け引きにより、幾度も形勢が逆転する怒涛の展開から目が離せなくなるはずだ。本稿では赤井秀一という魅力的なキャラクター、そして「緋色」シリーズの見どころについて、改めて触れてみたい。

※本記事には、ストーリーに関わるネタバレが含まれます。

赤井秀一とは何者なのか?

『名探偵コナン 緋色の弾丸』(c)2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 100巻の大台を目前に控え、ついに「あの方」の正体が判明するなど、さらなる盛り上がりを見せる『名探偵コナン』(著:青山剛昌/小学館『週刊少年サンデー』連載中)。TVアニメも25周年に突入、劇場版では毎年驚異の興行収入を叩き出す、まさに国民的ビッグタイトルだ。

 多くの魅力的なキャラクターが登場する本作において、赤井秀一は主人公・江戸川コナンこと工藤新一と並び、黒の組織を壊滅させる“銀の弾丸(シルバーブレット)”になり得ると称される人物である。さらにFBI捜査官にして、黒の組織に潜入捜査していた凄腕のスナイパーという肩書きもハイスペックぶりが際立っており、いわゆる“チートキャラ”とも呼べるレベルだ。卓越した推理能力を誇り、截拳道(ジークンドー)による接近戦の達人で、700ヤード(640.08m)離れた場所も正確無比に狙撃することが可能……等々、赤井の規格外れぶりは枚挙に暇がない。

『名探偵コナン 緋色の弾丸』(c)2020 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 だが、赤井秀一が多くのファンを魅了し続けてきたのは、その超人ぶりだけにとどまらない。むしろ完全無欠、全能的な描写とのギャップが愛されているのではないだろうか。物語が進むほどに、そして掘り下げれば掘り下げるほど新たな一面が見えてくる稀有なキャラクターなのだ。

 今年のバレンタインデーには、劇場版名探偵コナンの公式Twitterアカウント上にて「#赤井さんのここが好き」というハッシュタグが登場した。該当ハッシュタグを付け、ファンに赤井秀一の好きなところをツイートしてもらうという企画だ。当日は多くの声が寄せられ、見事にトレンド入りを果たしている。ツイートのなかには、作中の名言を書き添えるひとも見受けられた。赤井秀一の魅力をお伝えするべく、本稿でもご紹介したい。

「2人の女を同時に愛せるほど…器用な性分じゃないんでね…」(青山剛昌 『名探偵コナン 65』 小学館 2009 41p)

 潜入捜査するにあたり、組織の関係者である宮野明美と交際することになった赤井が、FBIの同僚にして恋人のジョディ・スターリングに告げた別れの言葉だ。明美との交際はあくまでも捜査のため、自分たちが別れなくてもいいのではないかと言うジョディに対し、赤井はこう答えて首を縦に振らなかった。

「目先の事に囚われて…狩るべき相手を見誤らないで頂きたい…」
「君は、敵に回したくない男の1人なんでね…」
(青山剛昌 『名探偵コナン 85』 小学館 2014 62p)

 「緋色」シリーズのクライマックスで、赤井が電話越しに告げたセリフだ。こんな言い回しがバチッと決まるのも、赤井秀一という男の魅力だろう。相手の安室透については後述するが、赤井と並び、ファンからの熱い支持を集める男である。なお、このセリフには続きがあり、2人のただならぬ因縁が垣間見えるものになっている。ぜひ劇場で聞き届けてほしい。

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