『約束のネバーランド』実写版特有のアドバンテージとは? アニメ版と比較して考える

『約束のネバーランド』実写とアニメを比較

 白井カイウ原作、出水ぽすか作画のコンビで、集英社の『週刊少年ジャンプ』で発表された漫画『約束のネバーランド』(以下『約ネバ』)。約4年にわたる連載は2020年6月に完結し、単行本は全20巻に及ぶ。この漫画を原作として2つの映像化作品が生まれた。ひとつは2019年1月から3月にかけて放送されたテレビアニメ、もうひとつは2020年12月に公開された実写映画だ。テレビアニメは2021年1月から第2期が放送されている。テレビアニメ版と実写映画版、それぞれ同じ原作を基にしていながら見どころは異なるので、ここでは公開中の実写映画版にフォーカスしながら『約ネバ』の面白さを探ってみたい。

 美しい自然に囲まれた静かな孤児院グレイス=フィールドハウス(以下GF)。そこには親のない子どもたちが多く生活しており、子どもらの面倒を見る優しいママの愛情のもと、毎日を元気に楽しく過ごしている。その中の11歳の女の子エマと、同じく11歳の男の子ノーマンは、ある日GFの恐ろしい秘密を知る。里親に引き取られるという名目でGFを出てゆく子供は、知性を持つ鬼たちの食料にされており、ママは“出荷”する子供たちの監視役として鬼の世界と繋がっていると。GFは食用の子供を育て、収穫するための農園だったのだ。エマとノーマンは、同年代の男の子レイに恐るべき真実を打ち明けるが、レイはずっと前からGFの秘密を知っていた。3人は家族同然の他の子どもたちを連れて、農園からの脱出を計画する。これがアニメ版、実写版に共通する『約ネバ』の大まかなストーリーだ。

『約束のネバーランドSeason 2』(c)白井カイウ・出水ぽすか/集英社・約束のネバーランド製作委員会

 作品のジャンルとしてはダークファンタジーだが、原作の発表媒体だった『少年ジャンプ』が指針としていた友情、団結なども子供同士の連帯の中に描かれていて、その子どもたちが逆境の中で運命に立ち向かうという、少年漫画らしさを芯に持つ物語でもある。

 2019年放送のアニメ版は、原作コミックスの1巻から5巻までの内容を全12話のエピソードで映像化した。対して実写版はテレビアニメ版の全12話相当のストーリーを2時間に凝縮している。そのためエマやノーマンがGFの真実に辿り着き、脱出計画を実行に移すまでの流れが非常にスピーディに描かれている。テレビアニメ版は原作の筋を時間をかけてじっくりと追いながら、徐々にサスペンスを高めてゆく演出だが、実写映画版は自分たちが食用児として出荷されそうだと知った子どもが、いかにして脱出劇を成功させるかの手に汗握るスリルを、早めのテンポの中で描いている。

 そして実写版『約ネバ』にはCGで作られた鬼が登場する。アニメーションは架空の生き物も作画で表現できるが、実写映画ではこの世に存在しないものをカメラの前に簡単には出せない。CGで創造された身の丈3メートルはあろうかという怪物が、重量を感じさせる足音と共に、生身の俳優と自然に並び立つ画面はなかなかの見ものだ。エマとノーマンが身を隠したトラックの下を鬼が覗き込む場面で、縦に2つ並んだ目玉がギョロギョロと動く様は不気味でよく出来ている。知性を持ち、人語を話す鬼の声を声優の関俊彦が演じているのも面白いキャスティングといえる。関俊彦は大ヒットアニメ『鬼滅の刃』でも、鬼社会の頂点に立つ鬼舞辻無惨の声を担当しているからだ。しかもどちらも『少年ジャンプ』の漫画原作という共通点がある。

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