『カネ恋』玲子と慶太の繕いの先には何がある? 恋愛ドラマに“お金”を持ち込む新しさ

『カネ恋』恋愛モノにお金を持ち込む新しさ

 『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系、以下『カネ恋』)がもう間もなく最終話を迎えるが、恋愛ドラマに「お金」を持ち出したのは珍しく画期的な題材と言えるだろう。

 まず、地味でお堅いイメージのある経理部社員で恋に奥手な“清貧女子”が主人公と聞いて、『これは経費で落ちません!』(NHK総合、以下『これ経』)を連想した人も少なくないのではないだろうか。「ほころび」が気になる九鬼玲子(松岡茉優)と、「ウサギ」を追ってしまう森若沙名子(多部未華子)という属性やキャラクターが近しい主人公。それから森若さんの恋のお相手だった営業部のエース・山田太陽(重岡大毅)が、『カネ恋』で言うところの北村匠海演じる板垣純と少し重なる。

 ただ、『これ経』は経費申請を通して見えてくる職場トラブル・人間関係にフォーカスしたあくまで“お仕事ドラマ”であり、森若さんと太陽くんの恋愛はサイドストーリー的な扱いだったのに対して、本作は恋愛と金銭感覚、人生や人間関係とお金というテーマを主軸に置いた“ラブコメ”であり、そもそも立ち位置が違う。そう考えるとやはり女性向けの恋愛ドラマ内でここまで“お金”を大々的に扱った作品は、本作が初だと言えるのではないだろうか。

 “お金”について触れた恋愛ドラマと言えば、20年前の名作『やまとなでしこ』(フジテレビ系)が挙げられる。玉の輿結婚を狙うCAの神野桜子(松嶋菜々子)が主人公だが、『カネ恋』での慶太の元恋人の聖徳まりあ(星蘭ひとみ)と指向性が似ている。当時とは時代背景も異なり、一概に比較はできないものの、『やまとなでしこ』では桜子の明け透けな性格から「お金か? 愛か?」というような極端な二択が明示されていた。しかし、現実問題ここまで極端な二者択一に迫られるケースの方がレアであり、“お金”と“結婚などの共同生活”はもっと密接なものである。『カネ恋』では愛もお金も包括して、この2つを切っても切り離せない関係として捉えられているのが新しく、自然で受け入れやすい内容に仕上がっているのだと思われる。

 また本作で特徴的な点は、なんと言っても三浦春馬演じる“浪費男子”の猿渡慶太の存在だろう。これまでも恋愛ドラマで御曹司が恋のお相手という設定は珍しくなかったが、彼らは“浪費”ではなく自分の持てる権力の当然の行使として、あるいはステータスの証明として“お金”を使いその効力を当たり前に享受していたのであって、ここまで明からさまに「無駄遣い」をする“男性”が描かれることはなかったように思う。『やまとなでしこ』の桜子にしてもそうだが、浪費家として描かれるのは圧倒的に女性側だった。

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