『カネ恋』玲子と慶太の繕いの先には何がある? 恋愛ドラマに“お金”を持ち込む新しさ

『カネ恋』恋愛モノにお金を持ち込む新しさ

 そして面白いのが、慶太が自分の境遇や、母親から愛情の証として33歳になった今でも頻繁にお小遣いを手渡されるという特殊な家庭環境に対してあまり悲観視していない点だ。同じく御曹司として描かれた『花より男子』(TBS系)での道明寺司(松本潤)は何事もお金で解決しようとする母親の姿に心底辟易し、どこか虚無を抱えていた。この「虚無感」が今のところ慶太には見受けられない。

 ただ、この「虚無感」を感じさせない慶太のキャラクターこそがミソなのだ。日本人の価値観にも紐づいているのだろうが、どうしても“お金”を題材にしてしまうと、俗物的になりすぎてやらしさが出てしまいかねないところを、慶太の全くの罪悪感を伴わない浪費ぶり、そして人懐っこくて、誰に対しても分け隔てのない天性の愛されキャラ、また自分の立場を鼻にかけることもなく自虐もできてしまう親しみやすいオーラによって、この難しい掛け合わせが嫌味なく描かれているのだ。

 そしてもう1点、本作がいわゆる恋愛ものの鉄板“価値観が正反対の2人が惹かれ合う”ストーリーにのみ留まらないのが、片方にのみ「ほころび」がある訳ではない点にあるだろう。第1話後半早々にその種明かしがされる訳だが、玲子自身も15年間片想いし続けてきた初恋相手・早乙女健(三浦翔平)に一方的に過剰に貢ぎ続けていることが発覚する。立場が反転することで、お金の使い道とは本当に十人十色でそれぞれの価値観や嗜好がダイレクトに反映されるものであることが強調される。

 極論どんな使い道であっても自身が幸せを感じられるのであれば、その消費は誰かに咎められるものではない。ただ、何か“満たされなさ”をごまかすために、それを少しでも解消しようとお金を投じているのであれば、それは“満たされなさ”を増幅させてしまうことに繋がりかねない。「とっておきの1つ」に出会うためには、また誰かにとっての「かけがえのない1人」になるには、代替品を手放してみる、“不要なもの”(=自分にとって不都合な事実)に向き合ってみることから始まるのかもしれない。玲子と慶太の繕いの先に、どんな展開が待ち受けているのか慈しみながら残り1話も噛み締めたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
TBS系にて、毎週火曜22:00~ 22:57放送
出演:松岡茉優、三浦春馬、三浦翔平、北村匠海、星蘭ひとみ(宝塚歌劇団)、大友花恋、稲田直樹(アインシュタイン)、中村里帆、八木優、河井ゆずる(アインシュタイン)、キムラ緑子、ファーストサマーウイカ、池田成志、南果歩、草刈正雄
ゲスト出演:梶裕貴、岡本莉音、トミー(水溜りボンド)、登坂淳一
脚本:大島里美
演出:平野俊一、木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾
主題歌:Mr.Children「turn over?」(トイズファクトリー)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/kanekoi_tbs

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