『カネ恋』が示す、“お金と恋”を冷静に見つめ直す方法 玲子と慶太は互いに補い合う関係に

『カネ恋』“お金と恋”を見つめ直す方法

 今週もありがとう、『カネ恋』――。

 松岡茉優演じる玲子のように、毎回お礼を言いたくなるドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系、通称『カネ恋』)。本作で描かれるテーマは“お金と恋”。一見相反するように見えて、実は切っても切れないものであることを気づかせてくれるドラマだ。むしろ連動して考えるからこそ、冷静に考えられることができるようにも思う。

そのコストは、リターンのある投資か否か

 おもちゃメーカーの経理で働く“清貧女子”の玲子は、社長息子で“浪費男子”の慶太(三浦春馬)にお金の使いみちは「消費」「浪費」「投資」の3つであることをレクチャーする。金銭感覚が壊れてしまっている慶太は、8万8800円するアロハシャツを「センスが磨かれるから投資」と茶目っ気たっぷりに主張するも、玲子は投じた金額に対して「リターンが見込めない」と却下。すると慶太は、玲子が早乙女(三浦翔平)に貢ぎ続けているプレゼントには、リターンがあるのかと反撃するのだった。

 聞けば、玲子の片思いは15年間続いているという。その間、一切のリターンはなし。明らかに玲子の気持ちに気づいているのに気づかない振りをしている早乙女に、我慢ならなくなった慶太はド直球に「どう思っているのか」と問う。すると、早乙女の口から「玲子は妹のようなもの」という恋愛の対象外であるという答えが。うすうす玲子もわかってはいたのだ。15年動けずにいた恋は「ほころび」だらけだということを。

 そんな玲子も、慶太の元カノ・まりあ(星蘭ひとみ)の「ほころび」にはすぐに気づく。20代の貴重な3年間を「投資」して、やっとこぎつけたセレブな彼との結婚。本当の自分を出せず、相手からの愛情も感じられないけれど、今さら手放すことなんてできない。そう意地になっている、まりあの現状を玲子は「コンコルド効果ですね。埋没費用効果とも言います」とお金の知識で整理していく。そして諭しながら、自分自身も同じ状況にいたと理解するのだった。その徐々に、悟っていく松岡の表情が実に巧い。

玲子でさえも陥った「コンコルド効果」とは?

 コンコルド効果とは、このままでは損失を出し続ける結果になることがわかっていても、これまでの投資を惜しんで途中でやめることができなくなってしまう心理的傾向のこと。難しい経済用語にも聞こえるが、「ここまできたらもったいないから」と続けてしまっているもの、といえばきっと身近に感じられるはず。

 例えば、ゲームの課金ガチャ、カラオケのフリータイム、期待はずれだった本……そして、幸せを感じられていない人間関係も。もちろん「すべての経験にムダなことなんてない」と言うこともできる。だが、後悔しない選択をするために、どんなリターンを想定して自分の資産(時間、お金、想い)を投資しているのか。ここまで投資しても期待していたリターンがないなら、次へ行くという限度を設定しておくという視点は持っていて損はない。

 また、コンコルド効果に陥らないために、客観的な視点で助言をしてくれる人をそばに置くというのも効果的な対策だそう。恋に関しては全く試算のできない玲子に、今回は慶太が見事にその助言役になってくれたと言える。お金に関しては玲子が、恋愛に関しては慶太が、それぞれの不得意部分を補い合う関係性になった2人。自然と1つの日傘のもとに入る姿が、人生に降り注ぐ様々な厳しいものを一緒に避けていくかのように見えて実に微笑ましい。

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