松岡茉優と三浦春馬さんの“良き”キスシーン コミカルに現実を映し出す『カネ恋』の潔さ

コミカルに現実を映し出す『カネ恋』の潔さ

 ゴロゴロピカーン! ……チュッ! 「えっ?」「うん?」「うん?」「え?」

 ああ、こんなにも「良き」キスシーンが見られるなんて、と嬉しくなってしまった。かねてより4話完結と知らされていた火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)。第3話となる今回は、まさに起承転結の“転”。これまで粛々とマイペースに暮らしてきた玲子(松岡茉優)の人生が大きく動き出す。

 15年間、温めに温めた早乙女(三浦翔平)への初恋に破れた玲子。その経験したことのない胸の痛みに、そして気持ちを弄ばれた悔しさに、それでもまだ好きなことへの苛立ちに、どう対処したらいいのかわからない。世間で聞く「失恋をしたら髪を切る」に従って自らの髪にハサミを入れるも、全くスッキリしない。それどころか後から後から溢れてくる涙と感情。全力で対処しようとしながら、いつの間にか慶太(三浦春馬)にぶつけていく。

 「だって好きだったんだもん!」人生の半分以上の長い間、早乙女を想い、幸せと健康を願ってきた。遠くで見ているだけでいいと言いつつ、想像の中ではおじいちゃんおばあちゃんになっても手を繋いで公園をスキップしていた日々。無駄を省いて生活してきた清貧女子の玲子にとって、その恋は財布の紐を緩ませる唯一の理由になった。心を潤すかけがえのない時間だったからこそ、その恋とのお別れは寂しくて、苦しくて、辛いのだ。

 一方、慶太にとって恋は、例えるなら気に入ったアクセサリーをその場で購入するような、きっと衝動的でライトなものだったに違いない。しかし、彼の感覚は玲子の価値観に触れる日々の中で少しずつ変化を遂げていく。玲子が持つアクセサリーは3つまで。それが彼女の大切にできる数だと知っているから。新しいイヤリングを迎え入れるなら、今まで愛用してきたものと「さよなら」する覚悟を伴う。

 慎重すぎるほどに何かを大切に迎える玲子を見てきたからこそ、その失恋の辛さがダイレクトに伝わってくる。「さお竹〜」が「早乙女〜」と聞こえたほど早乙女のことを考えていたのだと涙ながらに訴える玲子に、「想いが強すぎる」とハニカミながら、もらい泣きをしてしまうほどに。「お〜、よしよしよしよし」と抱き寄せた瞬間に轟く雷鳴。その音に驚いた2人はとっさに抱き合い、近づいた玲子の唇に慶太は思わずチュッと口づけしてしまう。それはまるで小さな男の子と女の子のような、初々しいキスだった。

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