福本莉子、長澤まさみや浜辺美波に続くか? 『ふりふら』で見せた“東宝シンデレラ”の新たな可能性
“キミスイ”こと『君の膵臓をたべたい』の浜辺美波と北村匠海が再共演を果たし、『アオハライド』と『ストロボ・エッジ』の三木孝浩監督×原作:咲坂伊緒が3度目のタッグを組んだ『思い、思われ、ふり、ふられ』。高校1年生の男女4人が繰り広げる、家族関係の悩みや将来への悩み、そしてそれぞれの片思いを軸にした青春恋愛映画だ。前述の2人はもちろんのこと、物語の格となる4人の主人公たちの演技が大きな見どころとなる本作だが、その中でひときわ鮮烈な演技を見せているのが、ダブルヒロインの一角・市原由奈を演じる福本莉子だ。
もうひとりのヒロインである、浜辺演じる朱里とは正反対の性格の持ち主である由奈。恋愛に対して現実的な思考を持つ朱里に対し、由奈は絵本の王子様に恋心を抱き、いまの自分を選んでくれる白馬の王子様がやってくるのを待つという、受け身で夢みがちな少女だ。しかしそんな由奈に“恋に落ちる準備”を勧める朱里との出会い、そして朱里の義理の弟である理央に恋心を募らせ、ふられ、彼の悩みを聞く立場となりながらも思いつづけることで、みるみるうちに自発的な性格へと変わっていく。いわば、恋愛をきっかけに成長するという少女漫画における典型的なヒロイン像というわけだ。
もっとも、作品評のほうでも指摘した通り(参照:『ふりふら』が示した、2020年代“キラキラ映画”の行方 青春はもはやファンタジー?)、この『ふりふら』は従来の少女漫画原作の青春恋愛映画、いわゆる“キラキラ映画”とはちょっぴり異なる形で恋愛・青春・友情の模様を描き出した作品である。登場人物の多くにとって、高校生活は将来へ向けたモラトリアムに過ぎず、自己と社会との間で折り合いをつけるための方法を模索していく中のひとつの要素として“恋愛”が存在するかのように描かれていく。そんな中でも、由奈だけは従来の“キラキラ映画”のヒロインのかたちを踏襲しており、ある意味では、彼女がいるからこそ、『ふりふら』が“キラキラ映画”になりうるのだといえるくらい重要な存在ともいえるわけだ。
理央に一目惚れし、彼が友人の朱里の弟であると知る。朱里と理央の複雑な家族関係を目の当たりにし、すぐさま彼女は理央が朱里に恋心を抱いていることを見破るのだが、朱里をライバルとして敵視することなく純粋に理央を思い続ける。そして、理央の気持ちを尊重しつつ、自分の気持ちにも整理をつけるために、ふられることを前提として告白して撃沈。それでも変わらず理央を思い続けることで理央の心を動かし、同級生の男子からのアプローチも断り、晴れて理央と恋仲になる。原作の事細かな心理描写を2時間の映画に集約させた急ぎ足な展開のなかでも、一貫して理央への思いを貫く彼女のシンプルすぎる心情は整合性が乱れることなく、それでいて恋に揺れる無垢さも見事に体現しているのである。