『ふりふら』が示した、2020年代“キラキラ映画”の行方 青春はもはやファンタジー?

『ふりふら』が示した、2020年代“キラキラ映画”の行方 青春はもはやファンタジー?

 『思い、思われ、ふり、ふられ』という漫画の連載がスタートしたのは2015年の夏のはじめのことで、それはちょうど同じ咲坂伊緒の『アオハライド』と『ストロボ・エッジ』が立て続けに実写映画化された直後、いわば“キラキラ映画”最盛期のことであった。2010年代の日本映画のムーブメントが少女漫画を原作にしたティーン向けの恋愛青春映画であったことは言うまでもなく、昨年の暮れに公開された新城毅彦監督による『午前0時、キスしに来てよ』の公開時に、この煌びやかなディケイドを総括(参照:『午前0時、キスしに来てよ』から考える“キラキラ映画”の変遷 2010年代有終の美を飾る作品に)し、筆者はこう結んだと記憶している。「2020年代にもさらに進化を遂げた上でこのジャンルは生き続けていくに違いない」と。

 けれどもそんな2020年代の幕開けは、あいにく学生の色恋模様にうつつを抜かしていられるムードではなかった。おそらくそれは“キラキラ映画”の主要なターゲット層である学生にとっても同様だったはずで、通常であれば出会いと別れが待ち受けるドラマティックな季節となったはずの春には休校措置やオンラインでの授業。外出もままならないピリピリした空気の中で過ごさざるを得なくなり(残念ながらそれは現在もあまり変わっていないが)、こうした映画の中で描かれるごくごく普通の青春模様すらある種のファンタジーになりかけていたと考えるといたたまれないものがある。

 ちなみに、冒頭のパラグラフで参照した記事で示した“キラキラ映画”の定義、「少女漫画雑誌に連載された原作をもとにした、高校生の青春と恋愛を主題に描いた作品」というごく狭い範囲に該当する作品は、実は2019年には5本しか公開されなかった。本数だけで見れば、“最盛期”と形容した2015年と同じではあるが、興行成績で比較すると雲泥の差だ。2015年は『ストロボ・エッジ』、『ヒロイン失格』、年末公開の『orange-オレンジ-』がともに20億を超える大ヒットとなり、『俺物語!!』も10億円に迫るまずまずの成績。その勢いを受けてブームと化し、様々な企画が動き出したことは明白で、2017年と2018年にはそれぞれ10本以上が制作されているのだが、10億超えの作品は『ひるなかの流星』(13.7億)、『PとJK』(10億900万)、『センセイ君主』(12.3億)のみ。もっぱら需要と供給の基本的なバランスを見失った供給過多状態に陥り、映画ファンと類される人々からさえも好意的に思われないジャンルになってしまったことは否定できない。

『私がモテてどうすんだ』(c)2020『私がモテてどうすんだ』製作委員会 (c)ぢゅん子/講談社

 そうした要因があってか、2020年代の“キラキラ映画”は7月に封切られた『私がモテてどうすんだ』が第1号となる。上半期には新作の公開延期が相次いだから一見しかたないようにも思えるが、同作は当初から7月公開に設定されていたので、最初からこの上半期には皆無だったことになる。しかし同作は、奇想天外な設定と乙女ゲー的シチュエーションを前面に押し出したコメディ作品という点で、“王道”に反したものであったといえよう。そう考えると、ここでようやく本題に入るわけだが、『思い、思われ、ふり、ふられ』、つまり『ふりふら』こそが2020年代の“キラキラ映画”が向かう先を示してくれる重要な作品になるのだと断言できる。もちろんそれが、“王道”を何本も手掛けてきた三木孝浩監督の作品であるからということも大きな理由のひとつだが。

『思い、思われ、ふり、ふられ』(c)2020映画「思い、思われ、ふり、ふられ」製作委員会 (c)咲坂伊緒/集英社

 初恋の相手は絵本の中の王子様という、恋愛に対して夢みがちな由奈が高校に入学する直前の春休み、同じマンションに同い年の朱里が越してくる。彼女は由奈とは正反対のタイプで、コミュニケーション能力も高く恋愛においても積極的だ。そんな折、由奈は絵本の王子様によく似た男子を見つけるのだが、それが朱里の義理の弟・理央であることを知る。由奈は理央に想いを寄せるようになるのだが、理央は中学時代まではただの同級生だったのに突然姉と弟の関係になった朱里への想いを断ち切れずに悩んでおり、そんな理央にふられるために告白をした由奈は、理央を想い続けながら友人としての関係を望む。一方で朱里は、いつの間にか由奈の幼なじみである和臣に恋心を抱くようになるのである。シンプルに言えば“四角関係”の物語ではあるのだが、この作品のあまりにも不思議なことは、これまでの“キラキラ映画”に必ずと言っていいほど登場してきた、強力なライバル格が存在しないことである。

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