『ハケンの品格』は大泉洋の“ラブコメ”演技を観られる貴重な作品 春子と東海林の恋の行方は?

『ハケンの品格』大泉洋の“ラブコメ”演技

 13年ぶりに復活した『ハケンの品格』(日本テレビ系)。今回は、大前春子(篠原涼子)が以前と同じ老舗食品商社「S&F(エスアンドエフ)」に再び派遣されるところからスタートする。そこには、出世して営業事業部・営業企画課・課長となった里中(小泉孝太郎)と、旭川支社・支社長補佐となっていた東海林(大泉洋)という変わらぬ面々がいた。

 第1シリーズでは、里中も東海林も大前春子に淡い恋心を抱いており、特に東海林は、自分の気持ちが整理されていないのに、衝動的に告白したりしてしまうくらいには春子のことを想っていた。東海林は当初は派遣社員の存在自体に疑問を持ち、あまり肯定的に思っていないキャラクターであり、春子のこともそんな中のひとりだと思っていた。しかし、仕事をする中で、春子のことをできる仕事人であり、同じ職場で働く一人の人間であると意識するようになり(そのことが、このドラマの一つの重要なテーマでもあったと思う)、次第にじわじわと気にかけるようになる様子が、ドラマのもうひとつの核となっていたように思う。

 春子もまんざらではなく、最終話では、仕事の失敗により倉庫勤務になった東海林に社長賞を取らせようと、その倉庫まで出向き、派遣社員として共に働きはじめるところで物語は終了。その後のふたりに、少しは進展がありそうな余韻を残していた。

 第1シリーズでの楽しみは、春子と東海林の口さがないケンカのシーンであった。ヒロインがしっかりもので物言いがはっきりしていて、逆に男性キャラクターにはどこかしっかりしていない部分があり、叱咤されるような関係性には、現代型のラブコメディの元祖ともいえる『花より男子』を彷彿とさせるものすらある。『道明寺と東海林の髪型にも、偶然かもしれないが共通点がある。

 この春子と東海林の関係性は、現在放送中の第2シリーズでも続行中だ。もっとも、第1話を観たときには、東海林は夜のシーンなど、一部にしか登場しておらず、“特別出演”のクレジットだったこともあり、今回は出演シーンが僅かなのかとも思っていた。しかし、いい意味で期待を裏切られた。第1話で東海林が春子と再開するシーンでは、「懐かしいなこの感じ」と思わずもらすシーンもあり、観ているこちらも、「これぞ『ハケンの品格』の醍醐味だ!」とうれしくなった。

 東海林はその後、第4話では本社勤務となり、営業事業部・営業一課・課長となる。実は第1シリーズの途中までの東海林は、“モーレツ社員”に近いところがあり、会社と上司と出世のためならなりふりかまわないような調子のいい人物であった。もちろん今でもそんなキャラクターなのだが、以前の方がより強かったのだ。しかし、春子たち派遣社員の手柄を自分のものにしてしまうような不正には躊躇するような正直な面も持っており、春子はそれを知っているのだった。

 第5話にある、「すべて自分の手柄にすればいいものを、土壇場で余計な報告をしたんです。派遣がほとんどやった仕事だ……などと」という春子のセリフからも、東海林が土壇場ではバカ正直なところがあり、春子の仕事を尊重しているからこそ、社長賞を取り逃した事実がこの13年の間にあったこともうかがえさせた。

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