『イエスタデイをうたって』の美術にみる“心象”の“風景化” 桜やカメラなどモチーフの役割を読む

 「愛とは何か」という難解な問いを、私たちにそっと投げかけてくるアニメーションがある。

 2020年4月4日より、テレビ朝日の新・深夜アニメ枠「NUMAnimation」内にて放送中のアニメ『イエスタデイをうたって』。原作者である冬目景が1998年~2015年と長期にわたり連載した同名マンガをアニメ化した本作は、現在第7話までが放送されている。

 本作は4人の登場人物がそれぞれに関係性を持つことで展開される恋愛群像劇だが、特筆すべき点はキャラクターの抱く感情の機微だ。一筋縄ではいかない複雑な恋愛を「演者」として立ち、舞台上という物語で演じてみせる彼らキャラクターの視線の動きや髪の一房が垂れ落ちるさま、誰かを追いかけ駆ける先にあるものや憂いだ時に見せる睫毛の影などを微細な演出で描くことにより、恋に悩む情動を受け手に語りかけてくる。

 幾分にも細分化された感情を巧みに描き出してみせる本作は、まさに日本人が得手とする「感情の多面化」という側面を持ち、その土台に「ままならない人間たちの恋愛模様」が構えていることにより、私たちの胸をしめつける作品となっているのだ。

  また、第4話では桜を、第5話ではカメラを心象風景を切り取るためのモチーフとして使用し、キャラクターそれぞれの感情によって映し出されたビジョンの中で生きるそれらモチーフは、こと『イエスタデイをうたって』という作品上で特別な役割と魅力を持って作品を彩っているといえる。

 第4話で亡き恋人を想い続ける森ノ目品子は、想い人と自分とを強烈に結びつける桜の下で幻想を見る。その桜は満開を見せほのかに白く光り、幻想じみた心象風景の中で品子は学生時代に戻り彼と再会を果たす。そして、過去の恋に囚われていた自分と決別をする。今はもういない彼の姿をその目で見届けた品子の目からは涙がこぼれ落ち、ある種のカタルシスを彼女はその幻想で経験することとなる。

 このような、アニメーションにおける見せ場、最も美しく受け手の感性に訴えかける場面に桜というモチーフを使い、またその光景をきめ細やかで計算され尽くした光の演出と鮮やかな色彩によって魅せるというのは、本作の大きな魅力を体現してみせるものであり、心象風景を「美しく際立たせ、風景化」することによって日本人の心の奥深くに存在する「儚さへの情動」を呼び起こさせている。

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