『トワイライト・ウォリアーズ』“龍兄貴”ファンにオススメしたい ルイス・クー出演作8選

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』が公開されてからというもの、信じられない日々を過ごしている。というのも、ルイス・クーの素敵なファンアートが毎日流れて来るのだ。正確にはルイス・クー演じる龍兄貴のファンアートなのだが、来日舞台によってルイス・クーのファンアートも普通に流れてくる。すごい。
1年前の自分に「ルイス・クーのファンアートが毎日流れてくるようになる」と言ったら果たしてどんな反応をするだろうか? 実際のところはわからないが、案外こう答えるのではないだろうか。「確かに驚くべき状況だが、そう信じられないことではない」と。なぜならルイス・クーは最高に魅力的な俳優だから。
ルイス・クーがいかに素晴らしい俳優であるかについて、ここで文字数を割くつもりはない。それに関しては『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』を観たものには重々承知だろう。ここで紹介するのは、『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ではじめて香港映画に触れ、ルイス・クーにほれ込んだ者に観て欲しいルイス・クー出演映画リストである。
とはいえ、新しく香港映画に興味を持ってくれた人の頭を掴み「これは視聴難易度が高いが必見で面白いので好きという気持ちが本物なら観ろ」などと強要するつもりはない。気軽に香港映画に触れて欲しいため配信で観られる作品に限られる(この限定的な条件によってルイス・クーの「真の名作」が観られないのではないか、と心配する人もいるかもしれないが、ルイス・クーはたくさんの名作を抱えているので問題ない)。
なお、このリストは「必見!」とか「これを観てないやつはあほ」といったものではなく、「この映画は本当に面白くて、俺は好き」というリストだ。観るか否かの選択は常に読者の皆様に委ねられている。ただ『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』ではじめて香港映画に触れた人にとって、広大で奥深い香港映画の世界を知る一助となれば幸いだ。
『柔道龍虎房』

このリストを作るにあたって最も悩んだのが「一番最初にどの映画を紹介するか」だ。色々悩んだ末に青春柔道映画『柔道龍虎房』にした。理由は二つ。まず『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で殺人王・陳占を演じたアーロン・クオックとの共演作であるということ。そしてもう一つは『柔道龍虎房』の監督が香港映画界の巨匠ジョニー・トーであるということ。恐らく、今後ルイス・クーの映画を追っていくうちに、ジョニー・トーの名を何度が目にすることになるのではないかと思う。そういうわけで、一番最初に紹介するのはジョニー・トー監督による珠玉の青春映画『柔道龍虎房』が相応しいのではないかと思う。
では『柔道龍虎房』とはどんな映画か? これを一言で説明するのはかなり難しい。「画面に映る人がどんな職業であれほぼ全員柔道使い」という不思議な映画であり、ロマンチックな青春映画であり、柔道に人生をかけた大人たちの再生映画でもある。確かなのは、『柔道龍虎房』の日本公開時の惹句であり、『姿三四郎』のTV映画版主題歌の歌詞でもある「泣いてもいいから前を見ろ!」という言葉が胸に刺さり過ぎて泣くということだ。なおこちらはDVDが廃盤であり、本来なら視聴難易度がかなり高い部類の作品だが映画配信サービス「JAIHO」のルイス・クー特集(なんてすばらしい特集だ)にて3月6日より再配信されている。
『ドラゴン×マッハ!』

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のソイ・チェン監督作で、かつ配信にあり、それでいてルイス・クーが出演している名作映画といえば『ドラゴン×マッハ!』だろう。ドニー・イェンの名を知らしめた伝説的ノワール映画『SPL/狼よ静かに死ね』の続編であり(物語上の繋がりは一切ない)2010年代最高峰の格闘アクション映画でもある。
因果と業を巡る物語も素晴らしく、最強の身体能力を誇るマックス・チャンとウー・ジンとトニー・ジャーが激突するクライマックスは人体の極限と物語と密接に絡んだアクション演出の極致を観ることができる。この作品でルイス・クーは心臓を患う臓器売買組織のボスにして、生き延びるために弟の心臓を狙う冷酷なキャラクターを演じている。アクションらしいアクションはないが、瘴気ただよう存在感は演技がうますぎてルイス・クーに見えないほどだ(前髪が長くてメガネをかけているからかもしれない)。
『SPL 狼たちの処刑台』

個人的意見を述べると、キリキリに追い詰められたルイス・クーの姿は上等なごま油のような滋味に溢れている。そういう意味で、この作品でルイス・クーが香港電影金像奨主演男優賞に輝いたのは必然だったのではないかと思う。
『SPL/狼よ静かに死ね』『ドラゴン×マッハ!』に連なる『SPL』シリーズの外伝であり、例によって物語上の繋がりは無い。あらすじはタイで誘拐された娘を追う香港映画版『96時間』といった感じだが、その道筋は凄惨かつ無慈悲さを極める。アクション監督を『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』で大ボスを演じたサモ・ハンが務めている。70年代~80年代にかけて香港アクションを恐ろしい勢いで革新していった鬼才のセンスが遺憾なく発揮されており、香港電影金像奨最佳動作設計(最優秀アクション監督賞)に輝いた。
『SPL 狼たちの処刑台』は業と因果によって血で濡れた道を行く修羅の物語をルイス・クーの鬼気迫る演技によって成立させている。とんでもなく面白いが、とにかく凄惨なお話なので観るにはちょっと覚悟がいる大傑作香港ノワール映画だ。
『コネクテッド』
自分でも「香港映画を触れるきっかけとなるための映画リスト」で『柔道龍虎房』と『SPL』シリーズを三連発でカマすのはちょっとどうかと思っている。というわけで次に紹介するのがベニー・チャン監督の『コネクテッド』。ハリウッド映画『セルラー』のリメイク作品で、一般人を演じるルイス・クーがたまたま一本の電話を受け取ったことから誘拐事件に立ち向かうことになるスリリングなスリラー映画だ。香港映画らしい滋味と一緒にハリウッド映画らしい真っすぐな娯楽性も持っているため、かなり見やすい作品なのではないかと思う(しかも面白い!)。また、誘拐されたシングルマザーのグレイス役を先日急逝されたバービー・スーが演じている。
本作に出てくるルイス・クーはあくまで一般人なので冷静でもないし強くもないし、カーチェイスをすると色んな人を巻き込んで大事故を起こすが、アワアワしながらも監禁された親子を助けようと全力で突き進むルイス・クーの健気な善性がとにかく熱い。あと、本当に一般人の運転なのでルイス・クーがカーチェイスをするとカーチェイスと全然関係ないところで事故って面白い。
こちらは3月29日にNetflixで配信終了となる。脅すわけではないが、配信終了した香港映画は結構な確率で二度と配信されなかったりするので、観られるうちに観ておくと良かったりする。




















