『イエスタデイをうたって』における日常描写の魅力 テレビ朝日「NUMAnimation」の方向性は?
恋とはどんなものかしら……なんて言葉を聞くだけで、ムズムズするものがある。だが、古今東西多くの人々の話題の中心であり、多くの偉人が考えても答えが出ず、いまでも物語で最も語られ続けている悩みの1つであるのは間違いない。そんな青臭いような、それでも切実な思いに真剣に向き合った作品が、現在放送中のTVアニメ『イエスタデイをうたって』(テレビ朝日)だ。今回は切実な恋の物語を支える、本作の日常描写の魅力について迫っていく。
近年はフジテレビのノイタミナ、MBS/TBSのアニメイズムなど、各局が深夜アニメを放送する枠を持つことでブランド化し、作品のみらず放送枠そのものの価値を挙げていこうという試みが見受けられる。そんな中、2020年4月からテレビ朝日では、熱中することを表すネット用語の“沼”とアニメーションを掛け合わせた、NUMAnimationという放送枠を新設しており、『イエスタデイをうたって』は記念すべき第1作目として放送されている。また、ネット配信サービスのABEMAにて、配信限定のオリジナル短編エピソードを公開するなどの試みもあり、ネットとテレビが連動して作品を展開するという点でも注目が集まっている。
『イエスタデイをうたって』は原作者の冬目景の手により、18年におよぶ連載期間を経て、2015年に完結した作品だ。通常、TVアニメの原作となる漫画は連載中の作品が多い中で、本作を1作目に起用したことは、NUMAnimationの方向性を探る上で重要になるのではないだろうか。本作は1990年代後半から2000年代前半を舞台としており、少しノスタルジックな雰囲気を漂わせる。また、内容も大学卒業後に自らの進路を決めきれない魚住陸生、高校を中退し陸生に恋をする野中晴、教師の道を選びながらも人生に疑問を抱いている森ノ目品子、高校生である自分が大人の女性である品子に何ができるのか迷う早川浪の4人の恋愛関係と共に、その年頃ならではの悩みを描く。中高生を主人公とした作品が多いアニメの中で、少しだけ大人の登場人物たちの日常と悩みを描くことで、若い社会人をターゲットとし、共感してほしいという狙いがあるではないだろうか。
今作のアニメ制作を請け負うスタジオは動画工房だ。近年『月刊少女野崎くん』や『NEW GAME!』『ダンベル何キロ持てる?』などの人気作を手掛けてきたが、丁寧な作画でキャラクターを描き、コミカルな作風のギャグアニメを得意とするスタジオという印象だった。今作ではシリアスな恋愛ドラマが中心となるが、その中にも晴の言動を中心にコミカルな一面が描かれており、重くなりすぎず、絶妙なバランスで制作されていると感じられた。