安達祐実、子役から実力派へと進化 『捨ててよ、安達さん。』で見せる受け身の演技の魅力

安達祐実、子役から実力派へと進化

 安達祐実が現在放送中の『捨ててよ、安達さん。』(テレビ東京ほか、毎週深夜0:52~)で、自身10年ぶりとなる地上波連続ドラマの主演を務めている。本作は女性誌の「毎号ひとつずつものを捨てる」という連載企画に臨むことになった安達が、“モノ”との関係性を振り返り、手放す決意をするまでを見つめた1話完結の物語。捨てられたいと願う“モノ”が、人間の姿で現れ、安達に直談判するというシュールな会話劇で進行する点はもちろん、安達が本人役を演じるというフェイクドキュメンタリーの手法が功を奏し、放送スタートからハマる人が続出。「演技がめちゃくちゃ自然で見入ってしまった」「淡々としてるのに存在感がある」など、安達の演技力にも注目が集まっている。

 2歳の頃にモデルデビューし、今年で36年。芸歴で言えばすでに大ベテランの域に入った安達祐実。その名を知らしめるきっかけとなったのは、90年代初頭に放送されていたハウス食品「カリー工房」のテレビCMだろう。キャッチフレーズとなった「具が大きい」は当時流行語にもなり、自ずと出演していた安達も脚光を浴びるようになる。1993年には映画『REX 恐竜物語』に主演。興行収入が20億円を超えるスマッシュヒットを記録し、一躍天才子役として一斉を風靡した。そして1994年には主演ドラマ『家なき子』(日本テレビ系)が放送開始。貧しい家庭に育ち、父にも暴力を振るわれるどん底の生活を送る少女が、たったひとりで生き抜こうと奮闘する姿に日本国中が涙した。「同情するならカネをくれ」は今なお語り草になる名セリフ。放送終了後には続編や映画版も作られるほどの人気シリーズに。その後も『ガラスの仮面』の実写ドラマ(テレビ朝日系)で、原作者の美内すずえから直々に指名されて主人公の北島マヤを演じたり、昼ドラや時代劇などにも果敢に挑戦。女優としての経験を重ねていく。結婚、出産を経た2014年には『花宵道中』で20年ぶりの映画主演。濡れ場も辞さない体当たりの演技で新たな一面を見せつけた。近年は、ドラマ『海月姫』(フジテレビ系)でのオタク女子や、『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)でのキャバクラオーナー役などクセのある役で存在感を示し、再評価の機運も高まっている。

 そんな中で始まった『捨ててよ、安達さん。』で、安達祐実に課せられたのは “受け”の芝居だ。夢の中(という設定)に訪ねてくる捨てられないまま放置していた“モノ”たちの訴えを聞き、過去の行動を振り返り、そしてようやく手放す決意をするというのが、これまでのパターン。主役でありながらほとんど聞き手という、ある意味異色の役柄だ。しかし、受け身でいるからこそ本人役を演じる上で欠かせない素の表情が引き出されているとも言える。どちらかと言うと、キャラ濃いめで圧の強い芝居が印象に残っている彼女だからこそのギャップが、安達祐実の新たな可能性を感じさせる。

 また捨てられたい“モノ”のセレクトも絶妙で、自身の代表作がダビングされた “完パケDVD”(おそらく『家なき子』)や高校時代に使っていたガラケーなど、彼女の内面を浮き彫りにするにはうってつけのアイテムばかり。いずれも本人に取材した上で脚本化されたとのことで、これまであまり明かされてこなかった苦悩や葛藤がリアリティを持って描かれている。これには本人も「物語はフィクションですが、どこが私の素に近く、どこが演じている部分なのか、曖昧な狭間をたのしんでいただけたらと思います」とコメント。ものを捨てるというシンプルなストーリーにこれほど意味を持たせられるのも、国民的子役スターから大人の女優へと稀有な人生を歩んできた安達祐実という存在があってこそだろう。

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