『マギアレコード』は『まど☆マギ』の脱構築に挑戦 劇団イヌカレーが描く魔法少女の救済

 現在TOKYO MX他にて放送中の『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』がいよいよ佳境を迎えつつある。本稿執筆時点では12話までを終え、放送は最終話を残すのみとなっている。本稿では、9年前アニメシーンを席巻した『魔法少女まどか☆マギカ』に魅せられた筆者が、新たな外伝を読み解く。

 本作の原作は、f4samuraiによって2017年に開発された同名のAndroid/iOS版アプリゲーム(2019年にはDMM GAMESよりPC版がリリース)。このタイトルは、単なるアニメのオンラインゲーム化という範疇を超え、OPや変身シーンはアニメを製作していたシャフトが担当。さらに新キャラクターの原案、監修、ドラマパートの脚本で、『まど☆マギ』の魔女や異空間を手掛けて一躍名を上げた劇団イヌカレーの泥犬が参加しており、まさに『外伝』の名を冠するに相応しいタイトルであった。

 そしてそのリリースから3年、ヒットを続けてきたオンラインゲームの万を持してのTVアニメ化が、今回の『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』ということになる。

 今回のアニメ版、制作は『まど☆マギ』と同じくシャフト。新房昭之監督がスーパーバイザーとなり、劇団イヌカレーの泥犬が総監督/シリーズ構成を務め、『劇劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』でキャラクターデザインを務めた谷口淳一郎氏が引き続きキャラクターデザインを手掛ける。これにより、ゲーム版を遊んでいない『まど☆マギ』ファンも違和感なく並列世界として受け入れられる『外伝』となった。

 止め絵1枚からでもそれとわかる「シャフト演出」と呼称されることもあるシャフトだが、その演出の特徴を簡単に言い表すとすれば、アニメの演出のお約束を脱構築し続けること。それによって、キャラクターを自らの代弁者として、画面に自らの心象風景を表出させていると言い換えることもできる。

 ギャグを原作にした『さよなら絶望先生』シリーズはわかりやすいが、いわゆる“萌えアニメ”然とした『ひだまりスケッチ』でさえもそうである。そしてその『ひだまりスケッチ』のイメージを逆手にとったダークな展開で視聴者の度胆を抜くことに成功したのが、同じ蒼樹うめをキャラクター原案に起用した『魔法少女まどか☆マギカ』であった。『まど☆マギ』は、“萌えアニメ”の脱構築だったとも言えるのだ。

 画面と違和感のある素材の突然のインサートは、シャフトで多用された手法であったが、その究極系が『まど☆マギ』における「劇団イヌカレー」という製作集団の投入だった。蒼樹うめによるキャラクターと全く相容れない魔女達の異様なデザイン、狂気を感じさせるシュールな空間が、キャラクター・巴マミの突然の、かつ残忍な退場によりインパクトを与えたことは論を待たない。そしてその後続く魔法少女たちの魔女堕ちと退場があったからこそ、ラストシーン、鹿目まどかによる救済を感動的なものとした。

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