『御上先生』考える力が生んだ御上と生徒たちの戦略 高橋恭平演じる青年の正体が明らかに

『御上先生』高橋恭平の正体が明らかに

 『御上先生』(TBS系)第8話は、遠くに放たれた矢がめぐりめぐって返ってくるエピソードだった(※本記事ではドラマ本編の内容に触れています)。

 御上(松坂桃李)を文科省へ呼び戻すことが検討される。拒めば担任を下ろすという。3年2組の生徒たちの成績が下がっていることが理由だった。「こんな話が出ているのも、おそらくは君たちに考える力がついているからだ」と御上。自分の頭で考えることを促す御上の方針は着実に浸透している。しかし、暗記に頼った学習を変えようとすると、試験の成績が一時的に下がる。もし、御上が言うように成績の低下が過渡的なものなら、自然に回復するはずだが、生徒たちは自分たちの手で状況を変えるために動き出す。御上を3年2組にとどめるために。

 第8話は、これまでに身に付けた考える力を試す演習でもあった。生徒たちは、御上が示したヒントから適切に議論のフレームを設定する。自発的にルールを見いだし、何のためにやるかを明確にする(「たとえオカミのためでも、誰かのために成績を上げる気にはなれない」「学校を見返すための点取りゲームには参加したくない」「受験は目的ではなく手段」)。和久井(夏生大湖)の発案で、自分たちらしい勉強法を再考することになった。

 『御上先生』が異色の学園ドラマである理由はいくつかあるが、そのうちの一つが「学び」に関する現在進行形の議論を取り入れていることだ。第2話で触れたアクティブ・リコールやホームルームでのディベートもそうだし、和久井が紹介した深掘りすることで分野を横断して記憶する方法、御上が補足する加齢とともに理解力が伸びる発見も含まれる。ゲーム性を持たせる方法は『ドラゴン桜』(TBS系)でも行われていた。2021年版で脚本監修を担当した西岡壱誠が、今作の教育監修を行っていることも関係しているかもしれない。

 この世で一番体力がある動物が人間、あるいは動物の中で最強かつ最弱なのが人間。それがもっともよくあらわれているのが高校時代ではないだろうか。高校3年生に関する「生命力が強いのにすごく繊細で、変化する速度がプランクトンなみに速くて、いっときも目を離せない」という御上の印象は、だからこそ何を教え、学ぶかが大事だと伝えているようだ。かけがえのない時間は二度と戻らない。獄中で弓弦(堀田真由)が綴る痛切な一文字一文字は、失われたものの大きさとも言い換えられる。

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