アイドルアニメブームが生み出した新たな視点 『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の魅力

 熱烈なアイドルオタクのリアルなオタ活動とその推しメンとの関係性を如実に描いたアニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(TBSほか)が2020年1月より放送され、多くの共感、反響を呼んでいる。

 主人公のえりぴよは、岡山県を拠点に活動する7人組の地下アイドルグループ「ChamJam」のメンバー・市井舞菜に熱狂的な思いを寄せるトップオタ。そんな彼女を取り巻くオタク仲間と推しメンの舞菜との関係性が、オタクの視点で描かれているのが特徴の作品だ。

 アイドルアニメという括りで見れば、2014年のTVアニメ放送以降一世を風靡した『ラブライブ!』が記憶に新しいが、近ごろは『だから私は推しました』(NHK総合)などアイドルファンが主人公のドラマも登場し、その様相が変わってきている。こうした趣向の変化を及ぼしている要因と、その中で『推しが武道館いってくれたら死ぬ』の作品としての魅力を探っていきたい。

 振り返ってみると、2010年代には音楽業界でのアイドルブームに影響されるかのように、『ラブライブ!』や『THE IDOLM@STER』などグループアイドルを主体に置くアニメ作品が増えた。2010年代に限らず、これまでのアイドルアニメは、アイドルを主人公にその成長を描く物語が主で、決してそのアイドルを応援するファンにフォーカスが当てられることはほとんどなかった。

 しかし、2010年以降『俺の妹がこんなに可愛いわけがない。』や『冴えない彼女の育てかた』に代表されるように、オタクの偏愛や生態を描いた作品が登場し、陰と陽でいえば陰の部分にスポットライトが当たるようになってきた。この段階で、偏見を持って語られやすいオタクというものが徐々に一般化してきたともいえる。そして、ここ最近のアイドル作品にその波が表れ始めている。それが、アニメ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』だ。アイドル主体で語られることが多かったアイドル作品が、ついにオタクの目線で描写されるようになった。

 放送から間もない『推しが武道館いってくれたら死ぬ』がすでに一定の評価、共感を得ているのは、2014年の『ラブライブ!』などのヒットにより、アニメファンの間で“アイドルを推す“という行為が浸透していき、作品の題材として成立する下地ができてきたことが大きい。

 そういった流れをふまえ、『推しが武道館いってくれたら死ぬ』はまさにアイドルオタクの活動に全振りしたアニメとなっており、これまでのアイドルアニメのような歌唱パートは最小限に抑えられ、えりぴよたちアイドルオタクの活動が大部分を占めている。

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