『劇場版 SHIROBAKO』は時代を表現する作品に 水島努監督の作家性を3つのポイントから探る

『SHIROBAKO』は時代を表現する

 “アニメの今がここにある” 

 『SHIROBAKO』のキャッチコピーを作品に反映させるのに、これほどふさわしい監督も他にいないかもしれない。『ガールズ&パンツァー』シリーズや『侵略!イカ娘』など、多くのアニメファンを魅了する作品を生み出してきた、現代のアニメ界を代表する水島努監督が手掛けたオリジナルアニメ『SHIROBAKO』の劇場版が公開された。公開週の週末の興行収入ランキングでは3位を記録し、内容も多くのアニメファンから称賛の声を浴びている。今回は水島努監督の作風から本作の魅力と特徴を考えていく。

 『劇場版 SHIROBAKO』は2014年の秋に2クールで放送されたTVアニメの続編だ。放送直後から2期や劇場版を望む声が多かったものの、5年の月日を経て公開された。“テレビアニメを作るテレビアニメ”の劇場版作品は、多くのファンが望んだように“劇場アニメを作る劇場アニメ”となっている。

 水島努監督の魅力の1つはテンポの良さだ。通常30分のテレビアニメ1回分のシナリオは、ゲラ(200字詰め原稿用紙)75枚程度で制作されているが、『SHIROBAKO』の場合は100枚ほどに及んだと、『SHIROBAKO設定資料集』に掲載されているインタビューにて明かされている。シナリオの枚数が多くなり、セリフの量が増えてしまった結果、間をゆっくりとるような芝居をしていると30分の枠組みに入らなくなる。そのため、弾丸トークのような会話劇が繰り広げられるのだが、水島努作品はその早さが気にならず、心地よいテンポ感となっている。

 今作でもそのテンポの良さが発揮されているが、前半と後半では間の取り方が異なるように感じられた。前半のミュージカルパートまでは、通常のアニメ作品のようにゆったりとしたテンポで間をとり、後半ではTVシリーズのように速いテンポで物語を推進させていく。このテンポの差で、物語後半の武蔵野アニメーションが映画作りに本格的に取り組み始め、ドタバタとした日々を過ごし、同時に活気が満ちていくことを表現しているように感じられた。このテンポ感は、音響監督を務めたり、作中で披露するダンスを考案するなど、音楽・音響のこだわりやリズム感からくるものではないだろうか。

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