『マギアレコード』は『まど☆マギ』の脱構築に挑戦 劇団イヌカレーが描く魔法少女の救済

 『まど☆マギ』からの9年間、「萌え絵」の浸透と拡散は著しい。だからこそ、今また『外伝』を製作するにあたって、主人公・環いろはは、最後の最後まで魔法少女とならなかった鹿目まどかと違い、最初から変身をしてみせる。だが逆に、自分がキュゥべえと契約した内容を忘れてしまった……という事実が序盤の謎として提示される。その後、みかづき荘という生活共同体に魔法少女が集い、第3話で巴マミが登場するのも含め、今度は「まど☆マギの脱構築」を行っているのが『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』である。

 また、本作では、スマートフォンが魔法少女達の日常に溶け込んだ当たり前のツールとして登場する。『まど☆マギ』の2011年はiPhoneは4だった時代で、未だケータイは圧倒的に電話、メールのツールだった。

 しかし、情報端末が1人1台となった世界で、主人公の環いろは他の魔法少女たちは逆に孤独を深めている様にみえる。そしてその要因として、劇団イヌカレーテイストの異空間が、街を浸食し、拡散浸透している様子が描かれている。

 かつて魔女は、ワルプルギスの夜でさえも、普通の人間には認識されなかった。しかし9年後、空間の浸食と共に、ウワサはどんどん人間を蝕んでいるのだ。その息苦しさの中、何でもできる、世界中と繋がっているスマホを手に、孤独に責めさいなまれる少女たちが生活共同体に集まらざるをえないという皮肉は痛烈だ。泥犬はそうして、魔法少女たちを退場させることのない外伝で、虚淵玄的『まど☆マギ』のイメージを脱構築しつつある様にも見える。

 そして物語は、謎の集団「マギウスの翼」による「魔法少女の救済」が何なのか、という核心部分がいよいよ明かされるクライマックスへ向け疾走している。まどかが変身と引き換えに願った自己犠牲により、過去から未来総ての魔法少女は救済された。続く劇場版『新編 叛逆の物語』では、その救済を暁美ほむらの独善的愛が綻ばせた。そして今、泥犬は、まどかによる救済と、それに対してのほむらによる叛逆を、今また、脱構築させるのか。

 豪華人気声優陣による群像劇としての側面も持ち合わせる『外伝』の結末や如何に。『まど☆マギ』ファンならずとも、その日を震えて待つことになろう。

■こもとめいこ♂
1969年会津若松生まれ。リングサイドで撮影中にカメラを壊され、椅子を背中に落とされた経験を持つコンバットフォトグラファーでライター。得意ジャンルはアニメ・声優・漫画・プロレス・格闘技・サバゲー等おたく趣味全般。web媒体では週刊ファイト・歌ネットアニメ他で活動中。Instagram

■放送情報
『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』
TOKYO MXほかにて、毎週土曜24:00~放送
声の出演:麻倉もも、雨宮天、夏川椎菜、佐倉綾音、小倉唯、小松未可子、大橋彩香、石原夏織、花澤香菜ほか
原作:Magica Quartet
総監督・シリーズ構成:劇団イヌカレー(泥犬)
メインキャラクター原案:蒼樹うめ
副監督:宮本幸裕
キャラクターデザイン・総作画監督:谷口淳一郎
音楽:尾澤拓実
アニメーションスーパーバイザー:新房昭之
アニメーション制作:シャフト
(c)Magica Quartet/Aniplex・Magia Record Anime Partners
公式サイト:https://anime.magireco.com/
公式Twitter:@magireco

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