【ネタバレあり】『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』論争巻き起こる作品構造を読み解く

『ドラゴンクエスト』賛否生まれる構造を読み解く

※本記事は『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』のネタバレを含みます。

 8月2日に公開された映画『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が激しい論争を巻き起こしている。今作は国民的ゲーム作品である『ドラゴンクエスト』シリーズの中でも人気の高い『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』(以下『ドラクエV』)を基にしたCGアニメ映画だ。多くのドラクエファンを中心に注目を集めている作品であるものの、大手レビューサイトやTwitter上では賛否がはっきりと分かれており「単純につまらない」などという不満よりも「ゲームを楽しんだ思い出を馬鹿にされたように感じる」といった、激しい怒りのこもった意見も散見している。なぜそれほど激しい賛否を巻き起こしたのか、物語の構成や展開に注目していきたい。

 本作は、『ドラクエV』の物語を再構成しているが、ゲーム作品を映画化する上で特に問題となりやすいのが物語の取捨選択だ。特に本作のようなRPGの場合は様々な町やダンジョンを冒険していき、個性的なキャラクター達との出会いや別れを繰り返して物語が進んでいくが、その全てを時間が限られた映画で製作することは不可能だ。さらに『ドラクエ』シリーズの場合は主人公が一切セリフを発しない作品もあり、主人公のキャラクター設定から作り始める必要がある。

 特に『ドラクエV』は親子三世代にわたる絆を描いた物語であり、ヒロインのビアンカとフローラのどちらかを選ぶ結婚問題などのファンの印象に強く残るイベントも多いために取捨選択が難しい。そのためにイベントの間をつなぐシーンはダイジェストのように進行してしまい、1つ1つの描写が荒くなってしまう。また、キャラクター達を深く描写する時間が限られているために、重要な人物にも関わらず出番が少ないなど魅力が発揮しづらく、今作においても主人公の娘は存在そのものがなくなってしまった。映画化に際して仕方のない面もあるのだが、『ドラクエV』を愛してきたファンにとっては雑な物語と感じてしまうことになりかねない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる