『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』が浮き彫りにした“リメイクの難しさ” 他アニメ作品と共に考察

『ミュウツーの逆襲』が描く存在理由の追求

 『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』が7月12日に公開された。リメイク元である『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』は1作目にしてシリーズの最高収益のほか、邦画としては北米歴代No.1の興行収入を記録するなど、興行面、内容に関する批評面でも高い評価を受けている。今回は『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』がリメイク前からどのように変化したのか、また同時代の大ヒットアニメーション映画との関連するテーマについて考えていく。

 『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』はポケモンシリーズ初の3DCG作品として大きな注目を集めている。2019年5月には初の実写化を果たした『名探偵ピカチュウ』が公開されており、ポケモンシリーズの新たな可能性を示した一方で、日本ではおなじみのコンテンツであったアニメ映画でも新たな挑戦となっている。なぜこのタイミングで手法の変更した理由について推測した記事として、こちらを参考にしてもらいたい。

 3DCGの映像クオリティに関しては残念ながら賛否が分かれてしまうだろう。ポケモンの質感などはよく表現されており、特にミュウツーが誕生した際の濡れた爬虫類のヌメヌメしたような皮膚の質感は唸るものがあった。ポケモンの毛並みなどもしっかりと作り込まれており、日本のCGアニメ作品としてレベルの高さと意気込みを感じさせる。またバトル描写の炎や、海をはじめとした水などのエフェクトの表現はリアリティと迫力があり、快感性が強いものとなっている。

 しかし日本はハリウッドと比べ、手書きアニメによる表現に注力している印象があり、3DCGの表現はまだ硬さが残ってしまっている。前述の『名探偵ピカチュウ』や、同日公開のピクサーの最新作である『トイ・ストーリー4』のようなのCG表現と比べてしまうと見劣りするのも確かである。これに関しては技術力や予算の差などもあるために一概に語ることはできない。初の3DCG化ということでその意義やクオリティに注目をしていた場合、ハリウッドの作品が比較対象になりがちなのは致し方ない部分があるだろう。

 また中盤ではサトシ達がミュウツーのいる島に招待されたものの、嵐の海を前に立ちすくんでいるところを変装したロケット団が用意した足こぎボートに乗って歌とともに賑やかに出発するシーンもある。作品全体がシリアスな雰囲気が包まれている中、明るい描写で中和するような工夫はされているのだが、日本の手書きアニメが得意とするデフォルメされたギャグ描写などがあまり力を発揮できていないように感じられてしまう。

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