【ネタバレあり】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』がヒーロー映画最先端となった理由

【ネタバレあり】『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』がヒーロー映画最先端となった理由

 マーベル・スタジオ制作の『スパイダーマン』シリーズ第2弾にして、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)映画における、“フェーズ3”と名付けられた、3段階目のシリーズ最終作に位置付けられた、本作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』。

 この作品が他のMCU映画と異なるのは、ヒーロー集結作品『アベンジャーズ』の最終作『アベンジャーズ/エンドゲーム』の次に公開された作品だということだ。この映画は、いままでのマーベル・スタジオ映画の顔であった、ロバート・ダウニー・Jr.やクリス・エヴァンスらが演じた第1世代のヒーローがシリーズから引退し、シリーズ全体のクライマックスとして最大のスペクタクルが展開しながら、同時に現代の正義のかたちを問う、シリアスなテーマを描き出すという内容であった。

 そのような巨大な作品の後を受けた本作に、同じようなテンションを求めていた観客は少なかったのではないだろうか。巨大な嵐が過ぎ去って、いったん落ち着いて楽しめる、ほどほどの作品になっているのが、おそらく『スパイダーマン』の第2作なのではないかと……。だが、その予想は裏切られる。本作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、シリーズ前作『エンドゲーム』を踏まえた上で、さらに先のテーマに厳しく取り組んだ意欲作だったのだ。ここでは、そんな本作がヒーロー映画最先端の位置を占めた理由を解説していきたい。

 “落ち着いて楽しめるほどほどの作品”……本作は、たしかに前述したような雰囲気でスタートする。ヒーローたちの奮闘のおかげで、宇宙はスーパー・ヴィラン“サノス”がもたらした最悪の惨禍を乗り越え、地球の人々も活力を取り戻していた。スパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)も、地元クイーンズの高校に戻り、親友や仲間たち、そしてピーターが密かに想いを寄せる、個性的なセンスの同級生“MJ”(ゼンデイヤ)らとともにヨーロッパへの研修旅行へと出発する。サノスとの凄絶な戦いを経験したピーターは、肩の荷を下ろして旅行を楽しもうと、アベンジャーズを支えるニック・フューリーからの再三の連絡を“スルー”し続けていた。

 ヨーロッパの有名観光地を訪れていく学生たち。そこではMJの関心をめぐる駆け引きや、ピーターの親友ネッドの恋など、これぞ学生たちの旅行というような浮ついた、しかし楽しい気分が続いていき、それらが一種の定型的な青春映画の文脈で描かれていく。

 だがその裏で、ピーターはヒーローとして忙しく駆け回っていた。旅行先にまでニック・フューリーが追いかけてきており、ピーターは引率の教師や同級生たちの目を盗んでは、他の宇宙からやってきたという“ミステリオ”(ジェイク・ギレンホール)とともに、新たな敵と戦わされていたのだ。これら一連の描写は、『スパイダーマン』シリーズとしての前作である『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)同様に、コメディ要素が含まれつつ描かれていく。

 正体がバレないように敵と戦うというのは、いちいち面倒くさい段取りが必要で、観客を飽きさせてしまう要素になり得る。だがここでは、様々なシチュエーションを用意することで、それ自体を娯楽化しているのだ。

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