『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』が浮き彫りにした“リメイクの難しさ” 他アニメ作品と共に考察

『ミュウツーの逆襲』が描く存在理由の追求

 同じく国民的な人気を誇る人気アニメシリーズである『ドラえもん』シリーズでも、リメイク作品は多い。最も近年にリメイクされた『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』では、歴史改ざん問題などを巧みに組み込みながら現代的な語り口に仕上げており、より現代に生きる子どもたちに届きやすい物語となっている。一方で日本では『トイ・ストーリー4』で描かれた自己の存在理由というテーマの語り方に対しても賛否が分かれているように、過去の名作のテーマをそのまま描くことが正しいのか、それとも現代的なアレンジを加えた方が観客に届くのかは未だ議論の余地が残る。

 最後に本作を語る上でもっとも重要な子どもたちの反応について語っておきたい。本作のような子どもが多く来場するアニメ映画では、物語に反応して子どもたちが応援したり、泣いたり笑ったりする声が劇場内で響くことが多い。大人が映画で鑑賞する際は静かにすることは当然のマナーであるが、本作のような作品の場合は子どもたちの反応をダイレクトで楽しめるのも映画館の醍醐味だ。筆者が劇場で鑑賞した際には終盤のピカチュウたちのバトルシーンにおいて「痛そう」という声なども聞こえてきており、その反応はオリジナルを劇場で見た当時の子どもたちと何ら変わりがないように見受けられた。

 20年前の作品となると、どうしても子どもたちは作品に手を伸ばしづらいだろうが、今作のように新たな形にリメイクされることで名作が再び子どもたちに届くことを考えれば、今作が制作された意義は大きかったのではないだろうか。今後の『ポケモン』シリーズが3DCGの作品となるか、また元の路線に戻るのかはわからないが、その手法も含めて動向に注目していきたい。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame

■公開情報
『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』
全国東宝系にてロードショー
声の出演:サトシ/松本梨香 ピカチュウ/大谷育江
ムサシ/林原めぐみ コジロウ/三木眞一郎 ニャース/犬山イヌコ 
ナレーション/石塚運昇
特別出演/市村正親 小林幸子 山寺宏一
主題歌:小林幸子&中川翔子「風といっしょに」(ソニー・ミュージックレコーズ)
原案:田尻智
監督:湯山邦彦・榊原幹典
脚本:首藤剛志
(c)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku  
(c)Pokémon (c)2019 ピカチュウプロジェクト
公式サイト:https://www.pokemon-movie.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる