『フェイクニュース』二転三転する展開はどう生まれた? 脚本家・野木亜紀子が語る制作の裏側

野木亜紀子が語る『フェイクニュース』制作

 10月20日に前編が放送された北川景子主演のドラマ『フェイクニュース』(NHK総合)の後編が、27日に放送される。『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)、『獣になれない私たち』(日本テレビ系)などの脚本家・野木亜紀子が手掛ける本作は、中年男性がSNSに投稿したつぶやきがきっかけで大問題に発展してしまう社会派エンタメドラマ。

 今回リアルサウンド映画部では、本作がNHKドラマ初執筆となった脚本家・野木亜紀子にインタビュー。本作が生まれたきっかけや、二転三転するストーリー制作の裏側などを語ってもらった。

「放送前からこんなに話題になるとは」

野木亜紀子

ーーまずフェイクニュースを題材にした経緯を教えて下さい。

野木亜紀子(以下、野木):そもそも、わたしがテレビや新聞などの誤報を訂正するチームのドラマを作りたいなと思っており、『アンナチュラル』をやる前から話を持ち掛けていたのですが、民放では難しいと言われ続けてきました。そんな時にちょうど本作の北野拓プロデューサーから、「NHKでオリジナルのドラマを何かやりませんか?」とオファーを受けたんです。

ーー北野さんとは元々知り合いだったのですか?

野木:いや、彼が連絡先をどこかから聞き出して、すごく熱い長文のメールをくれました(笑)。全くの初対面です。正直忙しいので、お会いしないでお断りすることもあるのですが、北野さんの長文メールは必死感が凄くて、面白いと思ってお引き受けしました。最初は『逃げるは恥だが役に立つ』の後だったこともあり、本作と全然違う恋愛モノとか、結婚の何かみたいな提案を、直接お会いした時に言われたんですけど、北野さんが報道出身ということで、わたしも報道のドラマがやりたいということがあり、意気投合しました。ただ当時、『アンナチュラル』と『獣になれない私たち』が決まっていたので、その間に書くとなると連ドラベースのものはちょっとスケジュール的に無理で、単発なら書けるという話にまとまりました。「今、報道絡みのドラマをやるなら何がいいかね〜」と2人で喫茶店で喋っている時に、「フェイクニュースは問題だよね」という話に辿り着きました。

ーー話し合いの中で生まれたということですね。

野木:そうですね。お互いそこに問題意識を持っていたので、フェイクニュースなら今やる意義があるのではと。ただ、まだ当時はフェイクニュースという言葉自体があまり世に広まっていなくて、そもそも「フェイクニュースということだけでNHKの上の人を説得して、企画を通せるのか?」みたいな話から始まりました。「ネット上のことなんてドラマになるのか?」という部分もあったので、どう企画を通すのか話し合って、最初は“フェイクニュース入門”みたいな企画書を北野さんがつくって、出しました。その後、フェイクニュースという言葉が一般的になったので、がらりと内容を変えたんですけどね。

ーー『フェイクニュース』が発表された時、まだ放送されていない段階で賛否両論となっていたのが印象的でした。そうして改めて本作を観て、物を確かめぬまま発言や拡散する怖さを改めて感じました。

野木:わたしも正直、放送前からこんなに話題になるとは思っていなかったんです。発表された時点では、もう脱稿していたわけですが、本当に面白いくらいに似たようなことが起こりましたね。

ーー『アンナチュラル』放送時も現実がリンクしており話題になりましたが、野木さんは未来を見据えた脚本づくりをしているのですか?

野木:頻繁に起こっていることをドラマにしているので、描いているのは所謂あるあるです。「そりゃそうなるよね」と予想通りのことが起きたのを身をもって感じました。

ーーもともと報道に興味があったとのことですが、きっかけは?

野木:大学卒業後、制作会社に入り、ドキュメンタリー制作をしていました。その時から「ドキュメンタリーの線引き」や「どこからがヤラセである」とか、「どこまでが演出なのか」とかがずっと気になっていたんですよね。結局ニュースというものも切り取られるもので、どうしても作り手の意図が介在します。そういうことに焦点を当てたドラマをやりたいなという気持ちもちょっとあったんです。割とすぐ「やらせだ」って言われますが、確かにやらせもあるのだろうけど、そうじゃない場合もあるじゃないですか? 例えば、ドキュメンタリーの中で移動するショットに、編集上で違うところで撮られた車のカットを入れるのはヤラセなのかとか。「それをヤラセと言われたら、どうして良いか分からなくなるよね」みたいなことを含めて、ずっと気になっていました。『空飛ぶ広報室』(TBS系)というドラマの時も、原作にはない報道の話をオリジナルで結構入れているんですね。そういう視点は、描いていくべきものの1つとして、自分の中にありました。

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