野木亜紀子が描くヒロインの共通点は“普通”? 『フェイクニュース』『けもなれ』から読み解く
10月は連続ドラマ『獣になれない私たち』(日本テレビ系)と2話完結の『フェイクニュース』(NHK総合)という野木亜紀子脚本の作品が2本放送される。
1月に放送された『アンナチュラル』(TBS系)のときから野木は、「際立った特徴を押し出すよりも、普通に存在する有能で柔軟性のあるキャラクターとしてヒロインを描きたい」と語っていたが、今回の2作のヒロインはどんなキャラクターだろうか。
『フェイクニュース』で北川景子演じる記者の東雲樹は、大手新聞社からネットメディアに出向してきて、その職場の現状に違和感を抱きながら働いている。ネットメディアの社員たちが、カジュアルでくだけたおしゃれをしているのに対し、樹は紺のパンツスーツで髪型にも乱れがない。そこに樹に緩いところのなさが表れている。
しかも、企画会議で提案するネタは周囲の記者とは違って真面目なものばかりで、それではPVが取れない、取材は経費がかかると一蹴されてしまうのだが、樹は新聞から来たばかりであるから、社会的に意義のあるネタに対して、ちゃんと裏を取って伝えるということが、なぜここでは通らないかの違和感を持っているのだ。
そして、彼女が青虫混入の投稿に疑問を持ち、取り上げたことで、それが海外のフェイクニュースサイトにつながり、また次回の予告から予想できることであるが、政治家の企みに迫ることになりそうだ。
一方で『獣になれない私たち』のヒロインの新垣結衣演じる深海晶は、ECサイトのアプリ制作を手がけるIT企業の営業アシスタントだ。細かいことに気づき、気づいたら実行に移せる晶は前職の派遣社員時代から派遣社員以上の働きを見せる。能力を評価されて現職に正社員として就いたが、現職でも営業アシスタント以上の仕事ができてしまうから、どんどん仕事が晶のところにきてしまう。
晶はいつも仕事で先回りできるのと同じように、いつでもその場の空気を先回りして読んでしまう。だから常に笑顔が張り付いている。笑顔でいれば、とりあえずトラブルを回避できるからだろう。服装だってその笑顔のように無難でコンサバなものばかりを着ている。樹も常にスーツだが、色も紺で形に遊びもないため、そこには隙がなく仕事人として武装しているようなところがあるが、晶の場合は、色合いも柔らかで、形にはけっこう遊びがあり、人を威圧するようなところがない。それも晶にとっては過剰適応という武装なのだろう。