>  > 『2001年宇宙の旅』70mm上映に迫る

『2001年宇宙の旅』70mm上映はどう実現した? 国立映画アーカイブに聞く、その背景と役割

関連タグ
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

「今回の企画が、次の一歩に繋がると一番いい」

『2001年宇宙の旅』(c)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.

ーーデジタルとの比較は難しいでしょうが、非常に高精細ということですね。

冨田:精細度は、メディアが変わると特徴が変わるんです。ノーラン監督もインタビューで、「フィルムで上映される前提で作られたものをデジタルにすると、その時点でフィルムの持っている様々な感性情報が失われてしまう」と言っていました。フィルムの場合、1コマ1コマの映像はランダムに並ぶ銀粒子でできているので、そのランダムな粒子が空気の層を感じさせるような、ある種の空間的な奥行き感や、冷気や暖気まで感じられますが、それをデジタルにする場合、0と1に整理されたクリアでフラットな映像に感じることがあります。ノルウェーで観た上映では、ノーランが監修したこの70mmはそのフィルムの特質がよく出ていて、冒頭の「人類の夜明け」のシーンから未開の荒涼たる埃っぽい雰囲気が、スクリーン全面からシャワーのように降ってくる感覚があって、圧倒的でした。『2001年宇宙の旅』は今の時代であればいろんなメディアで享受できますが、作られた当時の70mmの画や色の再現を試みたプリントで観ることは、非常に重要だと思います。

ーー私も昔『ダークナイト』や『インターステラー』の70mm上映を海外で観たことがあるのですが、言葉では表現できない美しさがありました。

冨田:観れば、フィルムが放つ黒の艶や立体感から、何かが違うというのが感覚的にわかるんですが、言葉で説明すると陳腐になってしまうのが悔しいですよね(笑)。そういった“画が持つ力”を感じることは、実際に体験しないとわかりません。今回の上映には、自分たちが若い時に得た同じ感動を、今の若い世代の方々に体験をもって感じてほしいというノーラン監督の想いも込められています。研ぎ澄まされて整備されたデジタルがいいんだという価値観が一般的にある中で、別物としてオリジナルを知るというのは貴重な体験になると思います。もっと言ってしまえば、選択肢がなくなっている現状はつらいですよね。デジタルしか上映環境がないために、フィルムで観たい人はわざわざ海外まで観に行っている。なので、選択肢を持てるように、優劣ではなく両方を紹介できるようにするというのは、私たちのひとつの使命ではないかと思っています。今回の企画が、次の一歩に繋がると一番いいですね。

ーー今後も70mm上映は続けていくということですね。70mm上映を集めた映画祭なんかもぜひやっていただきたいです。

冨田:映画祭となると、プリントのチェックや映写技師さんの確保もさらに必要になってくるので、まだ現実的ではないのが正直なところです。まずは1作品ずつ丁寧に自信をもって紹介していきたいなと。70mm映画祭をやっているところは、ノルウェー、アメリカ、オーストラリア、ドイツなど、いくつかあるんですよ。欧米ではそういった映画祭も実現しているので、課題は山積みですが、将来的にはできるといいなあ、という夢を持ちたいですね。まずは今回の上映がトラブルなく成功してからかなとは思います。お客様に満足していただけるか、そして私たち自身が技術的課題をクリアできるかにかかっています。

(取材・文=安田周平/撮影=宮川翔)

■公開情報
製作50周年記念『2001年宇宙の旅』70mm版特別上映
開催期間:10月6日(土)~10月7日(日)、10月11日(木)~10月14日(日)
会場:国立映画アーカイブ[2階]長瀬記念ホール OZU
主催:国立映画アーカイブ、ワーナー ブラザース ジャパン合同会社
定員:310名(各回入替制・全席自由席)
料金:一般 2,500円/高校・大学生・シニア 2,000円/小・中学生・障害者(付添者は原則1名まで) 1,300円
〈前売券は各回200席分完売しました・当日券(100席予定)〉
*国立映画アーカイブ及び東京国立近代美術館のキャンパスメンバーズ料金は、当日券のみあり(1,900円)。
★当日券をお求めの方は、入場整理券をおとりください。詳細は公式サイトをご覧下さい。
★学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は証明できるものを必ずご提示下さい。
★各回の開映後の入場はできません。

製作・監督・脚本・特殊撮影効果:スタンリー・キューブリック
脚本:アーサー・C・クラーク
撮影:ジェフリー・アンスワース
美術:トニー・マスターズ、ハリー・ラング、アーネスト・アーチャー
出演:キア・デュリア、ゲイリー・ロックウッド、ウィリアム・シルベスター
声:ダグラス・レイン
164分(休憩15分含む)/70mm/カラー/日本語字幕付き
(c)2018 Warner Bros. Entertainment Inc.
公式サイト:http://www.nfaj.go.jp/exhibition/unesco2018/

「『2001年宇宙の旅』70mm上映はどう実現した? 国立映画アーカイブに聞く、その背景と役割」のページです。の最新ニュースで映画をもっと楽しく!「リアルサウンド 映画部」は、映画・ドラマ情報とレビューの総合サイトです。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版