『ザ・サークル』監督インタビュー 「エマ・ワトソンが自身の経験を語ってくれたのが助けになった」

『ザ・サークル』ポンソルト監督インタビュー

 『美女と野獣』のエマ・ワトソンと『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズのトム・ハンクスが共演した映画『ザ・サークル』が現在公開中だ。デイヴ・エガーズのベストセラー小説を映画化した本作では、誰もがいつでもつながりあい、互いの体験をシェアしあい、最高に刺激的な毎日を送ることができる、世界No.1シェアの超巨大SNS企業“サークル”に就職した24歳の新人・メイが、思わぬ悲劇に巻き込まれていく模様が描かれる。

 今回リアルサウンド映画部では、プロモーションのために来日したジェームズ・ポンソルト監督にインタビューを行い、ベストセラー小説を映画化するに当たって意識したことや、エマ・ワトソンとトム・ハンクスとのコラボレーションなどについて話を訊いた。

「原作を読んで、ものすごく恐ろしい気持ちにさせられた」

ーー今回、ベストセラー小説を映画化するにあたって、原作者であるデイヴ・エガーズにあなた自身がコンタクトを取ったそうですね。原作のどのような部分に惹かれ、なぜ映画化したいと思ったのでしょうか?

ジェームズ・ポンソルト(以下、ポンソルト):僕はデイヴのデビュー作『驚くべき天才の胸もはりさけんばかりの奮闘記』からずっと彼の作品が大好きだったんだ。デイヴは、国際的・社会的な観点を持った、アメリカにおけるもっとも偉大な作家のひとりだと思う。ただ、この本を読んだときは、彼のこれまでの作品とは少し違う印象を受けたんだ。物語の核となるメイというキャラクターには共感できるんだけど、物語全体としてダークな風刺もののように感じられて、それが面白いと思ったと同時に、ものすごく恐ろしい気持ちにさせられたんだ。メイは必死なまでに何かを求めている。社会的な成功は収めているけれど、孤独や死、自分自身が忘れ去られてしまうことをものすごく恐れている。人から何かを承認してもらわなくても生きていけると思いたいけれど、どこかでそれを求めてしまうところは誰にでもある。そこに少しばかり自分自身を見てしまったんだ。

ーー映画の脚本はデイヴ・エガーズと共同で手がけていますね。どのような経緯で原作者である彼と共同で脚本を執筆することになったのでしょうか?

ポンソルト:自然発生的なものだったんだ。初稿は僕自身が書いたんだけど、ものすごく長くなってしまった。それをデイヴに見てもらったら、「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」というメモを送ってくれたんだ。その後、デイヴが「試しにいくつかのシーンを自分に書かせてもらえないか」と提案してくれて、互いにやりとりをしながら、結果的に共同脚本というかたちになっていったんだ。デイヴは膨大な量の原作を2時間の映画にするのは不可能だということを承知の上で、必要であれば何か新しいことを作り出してもいいし、映画として必要ないと感じたところは掘り下げなくてもいいと、僕の背中を押してくれた。文学と映画はまったく違う文化だということをものすごく理解していて、一切エゴがなかったんだ。原作の本質的なテーマはしっかりと抑えつつ、映画という視覚的なメディアとして、どういう風に作り上げていくかを考えながら脚本を執筆していった。彼とのコラボレーションは最高だったよ。

ーーこれまであなたが手がけてきた作品(『スマッシュド ~ケイトのアルコールライフ~』『スペクタキュラー・ナウ』『人生はローリングストーン』)とは少し作風が変わった印象を受けました。

ポンソルト:僕は物語に応じて語られるべき言語やビジュアルがあると考えているんだ。カメラワーク、色彩、スコアなどにおいて、撮影監督やプロダクションデザイナー、作曲家たちと、毎回その作品がどういうものなのかをDNAレベルで話し合うんだけど、作品の核となる部分が何なのかは、作品自体が僕たちに教えてくれる。僕はそれに耳を傾けながら、その作品にあったスタイルで映画を制作していくというわけなんだ。

ーーその一方で、これまでの作品ではアルコール問題を中心に、何かに対して依存症がある人物が描かれてきましたね。

ポンソルト:確かにそうだね(笑)。おそらく、僕は何かしらの欠陥や短所がある人々の物語を描くのが好きなんだ。アルコール依存症もそうだけど、薬物依存や、他人への愛を求めるが故の依存などもそうだね。今回の作品に関して言えば、テクノロジーやインターネットへの依存を描いているわけだから、ある意味、僕が描く人物はみな何らかの依存症があるということは共通しているね。そういった葛藤を描くことで、より登場人物が人間的なキャラクターになっていくんだ。

ーーそもそもあなたは音楽的なバックグラウンドからキャリアをスタートさせているんですよね?

ポンソルト:ああ、そうなんだ。若い頃は音楽についての文章をよく書いていて、大学時代には『ローリング・ストーン』誌に寄稿していたこともあるんだ。常に音楽は大好きだし、平均的な才能しかないけれどプレイヤーでもあるんだ。ミュージシャンの友達も多いしね。

ーー今回、劇中でBECKが本人役で登場していますね。

ポンソルト:僕はBECKのことが大好きだったから、出演してくれて本当に嬉しかったよ。ただ、彼に関してはもともと知り合いというわけではなかったんだ。ミュージック・アドバイザーのティファニー・アンダーズがロサンゼルス育ちで、彼女がBECKと親交があって今回の出演につながったんだ。

ーー劇中では、エマ・ワトソン演じる主人公メイが新サービス“シーチェンジ”の実験モデルに選ばれるわけですが、BECKも『シー・チェンジ』というアルバムを出していて、ここにもつながりがありましたね。

ポンソルト:はははは。そうなんだよ(笑)。“シーチェンジ”はもともと原作にも登場していて、撮影中にちょうどスタッフたちと「そういえばBECKのアルバムのタイトルも……」という感じで話していたんだ。本当に偶然だったね。

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