【漫画】プロになれなかったらもう終わり? 奨励会を退会になった少年の再生を描く将棋漫画『新月の盤に』

将棋のプロを養成するための機関「奨励会」を降級退会となり、深い絶望の末に将棋をやめてしまった少年。彼が高校で同じクラスの少女から誘われたのは、部活動としての「将棋部」で……。
勝つことだけが正しさになってしまっていた少年が、将棋の楽しさや将棋を好きな気持ちに気付かされる漫画がXにアップされた。「プロになれなかった少年の青春再生の物語」の始まりを描く本作は、「アフタヌーン」(講談社)にて連載中の漫画『新月の盤に』の第1話だ。
今回は作者であるみやびあきの(@Mi_akino)氏に、将棋漫画を描き始めた経緯やこだわっている点について、話を聞いた。(青木圭介)
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ーー本作を創作した経緯を教えてください。
みやびあきの:私の息子が実際に、奨励会に通ってやめた経験があるんです。息子が奨励会に行っている間は将棋の漫画を描くつもりはなかったんですけど、やめたあと、テーマとして選んでいいかもと思ったときに、“やめたその先”に魅力を感じました。
また、私の描く漫画は「世界観が優しい」と言っていただくことが多くて、いつかは厳しい世界観の作品も描いてみたいと思っていたんです。でも絵柄的に、バトル漫画とかは難しい。そこで、「将棋の世界は私が描ける唯一の厳しい世界かもしれない」と思いました。
ーー勝負の厳しさに、みやびあきの氏らしい優しい雰囲気がマッチしているように感じました。
みやびあきの:最初は、私の描く世界観が厳しい勝負の世界に合うのかなというのは、すごく不安だったんです。でも息子が奨励会をやめてから、棋譜を見せてもらう機会があって、そこで「将棋の指し方でこんなに心のなかや性格がわかるのか」と驚きました。その将棋の特性に、私として感じるモノがあって挑戦したくなったんです。
息子は奨励会をやめましたけど、棋士になれなかったら将棋をやめるのかというと、そんなこともなくて。むしろ奨励会をやめてからの方が、楽しく指せているようにも見えます。その辺りが私にとっての漫画とリンクしたのも、奨励会をやめた少年が主人公の将棋漫画を描きたいと思った1つの理由です。あまりクサくならず、同じ競技や活動でも気持ちの持ち方ひとつで楽しめる方法がたくさんあると、表現したかったんです。
ーーみやびあきの氏も元々将棋が好きだったのでしょうか?
みやびあきの:将棋が好きな夫と息子と長年過ごしていたので、将棋界の知識はそれなりだったと思います。将棋を指す方は、まったくしていませんでした。でも高校将棋を舞台にした漫画を描きたいと話したとき、「詳しくない人が描いた方がいい」と言われたんです。将棋の内容よりも人間ドラマに重きを置きたかったので、将棋に詳しすぎるとどうしても将棋に寄ってしまうとのことでした。第2話のネームが完成して連載会議を通るまでは、指す方の将棋は「意地でも勉強しないぞ!」と思いながら描いていました。連載が決まってからは、詰将棋をしたり戦法を勉強したりして楽しんでいます。
ーー将棋漫画を描くうえでこだわっている点は?
みやびあきの:やっぱり棋譜と感情のリンクは、しっかりと表現したいと思いながら描いています。あまり将棋に詳しくない方にも、リンクしていることがわかるように描くことを心がけていますね。
ーー本作で出したい高校将棋の世界の魅力を教えてください。
みやびあきの:今の将棋のトッププロの世界ってかなり厳しくなっていて、AIが良くも悪くも影響を与えています。見る方はAIの示す形勢判断と候補手のおかげで楽しみ方が増えましたが、指す方はAIのおかげで加速度的に研究が広く深くなりました。新手が誕生してもすぐにAIを使って対策され、次はもう使えない。新手が対処される時間があまりにも早く、息苦しい印象もあります。
それに比べて、高校将棋は少し違います。息子のお師匠様が「AIの指す手の意味が本当にわかってくるのは、ある程度棋力がついてからだ」と言っていました。その理解できる棋力というのは、高校将棋のトップ層か、その少し上くらいのレベルなんです。なので高校将棋にはまだAIの影響を受けていない、人間が自分自身で研究しながら指してきた頃の雰囲気が残っています。プロとは少し違った純粋さや無邪気さ、無鉄砲さが許されるのが高校将棋の魅力だと思うので、そこをしっかりと出していきたいです。
ーー本作のなかで、みやびあきの氏自身が気に入っているポイントは?
みやびあきの:露凛と将棋を指していた悠月が、露凛が指した手を「間違い」と言うシーンがあります。ネームを直しているときに担当さんから「このシーンはすごく大事」と言われて、私も改めてそうだなと思いました。正しさでしか将棋を判断していなかった悠月が、露凛の手を間違っていると断定する。でも諦めずに指していた露凛が上手く出て来れなかった大駒の角を出せたときの、あの笑顔。失敗しながらもいい手を指せて露凛が楽しそうにしているシーンは気に入っています。間違ってもいいという感覚を伝えたかったんです。
ーーみやびあきの氏が漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
みやびあきの:中学生の頃に小説を描くなど、元々創作は好きでした。そのなかでも、特に好きだったのが絵を描くことだったんです。一時期はイラストレーターを目指していたんですけど、私の絵って絵だけで生きていけるほど突出した魅力はなかったんですよね。でも一枚絵で見せるよりも、ストーリーのなかで絵を見せる方が魅力的になると感じて。総合力で勝負しようと、漫画を描き始めました。
ーー最後に、本作をどのような作品にしていきたいですか?
みやびあきの:今はとにかく、描きたい地点までしっかりと描けるように頑張りたいなと思っています。また本作は、子供に読んでほしいなと思っているんです。一歩踏み出したい子とか何かを押し込んでしまった子の、背中を少しでも押せる作品にしたいです!












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