急逝した社会学者・打越正行の遺稿集『沖縄社会論』一周忌に刊行 パシリ論から暴力論まで集大成

社会学者・打越正行の遺稿集『沖縄社会論』

 打越正行『沖縄社会論 周縁と暴力』が筑摩書房より12月10日に発売される。

 本書は、2024年12月9日に急逝した社会学者・打越正行の遺稿集であり、打越の一周忌に合わせて刊行される。

 打越正行は1979年生まれの社会学者。首都大学東京人文科学研究科にて博士号(社会学)を取得し、和光大学現代人間学部専任講師、特定非営利活動法人 社会理論・動態研究所研究員などを歴任。広島と沖縄で、暴走族・ヤンキーの若者を対象とした参与観察調査をつづけた。単著に『ヤンキーと地元――解体屋、風俗経営者、ヤミ業者になった沖縄の若者たち』(筑摩書房、2019年、第6回沖縄書店大賞)、共著として『最強の社会調査入門』(ナカニシヤ出版、2016年)、『地元を生きる―沖縄的共同性の社会学』(ナカニシヤ出版、2020年)、『〈生活-文脈〉理解のすすめ――他者と生きる日常生活に向けて』(北大路書房、2024年)などがある。2024年12月9日、逝去。

 『ヤンキーと地元』(2019年3月刊、2024 年11月ちくま文庫化)で打越は、沖縄の暴走族の「しーじゃ・うっとう(先輩・後輩)」関係などをもとに、建設業で生きるリスク層の生活を描いた。地元の人間でも調査できない領域に“パシリ”として入っていった著者の本は、第六回沖縄書店大賞沖縄部門大賞を受賞するなど高い評価を得る。

 社会調査の方法として際立つ「パシリ」だが、打越は「当事者でない者が、どれだけ当事者を内在的に理解できるか」という問いへの答えとして、パシリを方法論的に練り上げようとしたといえる。

 本書は、方法論を深めることで、より包括的かつ理論的に沖縄社会を描こうとしている。打越は「沖縄を理解するとはどういうことか」という問いのもと、沖縄の人々を「繋ぎ止められる」ものを探った。パシリ論、沖縄社会論、暴力論の3部からなり、石岡丈昇、上原健太郎、上間陽子、岸政彦の解説が付く。社会学者・打越正行の到達点、集大成となる一冊だ。

■書誌情報
『沖縄社会論 周縁と暴力』
著者:打越正行
価格:2,970円
発売日:2025年12月10日
出版社:筑摩書房
上間陽子による本書まえがきが、「webちくま」にて公開中
https://www.webchikuma.com/n/n27aed13fb767

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